欧州発「サーキュラーエコノミー」、日本の地方が先進的だった

推進力はファーメンステーション

海外からの視察団。発酵事業がきっかけとなり、奥州市への訪問者が増加

資源問題をめぐってサーキュラーエコノミー(循環経済)がキーワードとなっている。限られた資源の有効活用に知恵を絞り、産業や雇用を生み出す経済政策だ。欧州発の社会モデルだが、すでに日本の奥州市(岩手県)で実践されている。 地域での資源循環の推進力となっているのが、ファーメンステーション(東京都墨田区)だ。「ラボ」と呼ぶ奥州市の工場で未利用の天然資源を発酵してエタノールを作り、化粧品やアロマの原材料として販売している。さらにエタノール製造で発生する残さをせっけん原材料や家畜の飼料にしている。その飼料で育った地元の養鶏の卵がブランド化し、卵で作ったスイーツも人気だ。 同社の酒井里奈社長は「ゴミをゼロにする地域循環モデルになっている」と語る。ただし、単純に資源を使い切っているのではない。未利用資源を価値ある素材に変え、関係者とも経済メリットを分かち合える事業モデルだから、地域で受け入れられた。 資源循環の輪に引き寄せられるように視察団が海外からも訪ねてくるようになった。発酵の見学で終わらず、南部鉄器の工場もめぐるツアーとなっており、買い物や宿泊でも地域に経済効果をもたらしている。 酒井社長は金融会社での勤務を経て東京農業大学に入学し、穀物からエタノールを作るバイオ燃料事業に携わった。2000年代、国のバイオマスタウン構想もあって事業は注目されたが、採算は合わなかった。自身が09年に設立したファーメンステーションは化粧品原料に活路を見いだした。「化粧品への採用には機能性の確認など厳しい条件があり、他のエタノールと差別化になった」という。原料の一つであるコメは休耕田で無農薬栽培し「有機JAS認定」を受けた。「エタノールで初のオーガニック認証」(酒井社長)が化粧品会社から評価され、採用が決まった。 奥州市で回り始めた資源循環の輪は青森県にも広がった。JR東日本は青森産リンゴ飲料を販売している。課題はリンゴの搾りカスだった。そのカスをファーメンステーションが原材料にし、出来上がった雑貨をJR東日本が販売する。エタノール抽出後の残さも牛の飼料にし、育った牛はJR東の関連ホテルで調理して提供している。 地域で発生した資源循環の小さな輪でも、大企業とつながると回転力が増す。地域経済を潤う資源循環が日本のサーキュラーエコノミーとなる。

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