次世代水素ステーションのキーパーツに。フジキンのバルブ開発が凄い

極低温対応に逆転の発想

 フジキン(大阪市北区)で、超高圧液体水素適合バルブの開発プロジェクトが立ち上がったのは2016年。水素ガスのステーション設置が本格化し始め、社内では同ガス用バルブの改良や市場立ち上げに注力していた頃のことだ。水素ガスは液化すれば800分の1の体積で、輸送や貯蔵の効率化につながる。水素大量消費社会を見据え、早期に取り組んだ液体水素用バルブ開発が結実した。  「ガス用バルブの生産に追われていた状況での次世代プロジェクトで驚いたが、当社の開発ポリシーは“時代の半歩先”なので異論なかった」。薬師神忠幸革新開発設計課主幹はこう振り返る。  液体水素ではマイナス253度Cの極低温と99・9メガパスカルの超高圧対応、ステーションで複数車両に同時充填可能な大流量も求められる。3要素を満たすには材料と構造の根本的な見直しが必須。液体水素を高圧で試験できる設備が社内になく、実証評価も壁となった。  通常のバルブの軸部品で使う潤滑油は低温で固化し、使い物にならない。解決策は固化しにくい潤滑油を探すことではなく「特殊表面処理によって、潤滑油がいらない軸部品にする」(柳田保昌革新開発設計課主事)という逆転の発想だった。  また、低温バルブ設計では流路と封止材の位置を離すのが定石で、マイナス253度C対応では長尺化が避けられない。この問題に、特殊ステンレス鋼採用と形状の工夫でバルブ全長を従来構造比50%以下に抑制し、設置・保守しやすいバルブを考案。流量も水素ガス用比で10倍を確保した。  最後の壁だった実証では宇宙航空研究開発機構(JAXA)とロケット実験場での評価を経てクリアした。国内液化水素ステーションでの採用が既に始まり、今後は米国市場での展開も進める。山路宮治雄専務兼最高技術責任者(CTO)は「水素大量消費社会に向け当社ができることは何かを突き詰めて考えた」と言う。  バルブは過酷な状況下で絶え間なく動き、流体制御し続ける縁の下の力持ち。「自動車分野だけでなく、水素発電や産業用途でも貢献したい」(山路CTO)。社会に資する矜持(きょうじ)を原動力に開発部品をより広く役立てる。 (東大阪支局長・坂田弓子)

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