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「アイアンマン」もびっくり、MITが小型核融合炉「ARCリアクター」の概念設計

磁場強度2倍の超伝導コイルで装置の大きさ・コスト大幅減
「アイアンマン」もびっくり、MITが小型核融合炉「ARCリアクター」の概念設計

ARCリアクターのイメージ(MIT ARCチーム提供)

 実用的な小型トカマク式核融合炉の概念設計を、米マサチューセッツ工科大学(MIT)の研究チームが行い、Fusion Engineering and Design誌に論文発表した。国際共同プロジェクトとして現在フランスに建設中のITER(国際熱核融合実験炉、イーター)と同じ核融合出力であれば、装置の大きさが半分で済み、コストについても約400億ドルかかるとみられるITERに対し、50億ドル程度と10分の1近くまで圧縮できる可能性があるという。

 MITプラズマ科学核融合センターのデニス・ホワイト所長と博士課程のブランドン・ソーボム氏らが設計し、「ARC(アーク)リアクター」と名付けた。今後さらに性能向上を目指してデザインを洗練させるほか、プロトタイプの製作に向けた資金集めも行う。

 ちなみに映画『アイアンマン』に登場するのは熱プラズマ反応炉の「アークリアクター」。17歳でMITを首席で卒業したという設定の主人公トニー・スタークによる発明で、スターク・インダストリーズに設置された大型の反応装置と、胸に埋め込んでアイアンマンの動力源になる2つのタイプがある。今回のARCリアクターは、これとは直接的な関係はなく、ARCはそれぞれ、「Affordable=手ごろな値段の」「Robust=頑丈な」「Compact=小型」の頭文字を表す。

 小型・低コストの設計を可能にしたのは、高温超伝導材料のREBCO(希土類バリウム銅酸化物)を採用しているため。重水素と三重水素で核融合を起こすのに必要な、数千万度から数億度という超高温のプラズマ(荷電粒子のガス)を閉じ込めるのに、強度が2倍の磁場を発生させるコイルが作れるという。しかも核融合出力は磁場の強さの4乗で効いてくるため、理論的には16倍の出力が生み出され、同じ出力なら反応炉の容積と重量を10分の1以下にできるという。

 そのほか、装置全体を分解しなくとも、ドーナツ型の反応炉から格納容器のコアの部分を取り出しやすくする「モジュールコア」を採用、メンテナンスや材料を変化させる性能向上実験をしやすくした。さらに、高エネルギー中性子による格納容器のダメージを減らすのに固体材料で被覆するのではなく、フッ化リチウム・ベリリウム溶融塩の液体を循環させる方式をとっている。液体の溶融塩は循環しながら中性子を減速するとともに、発電用の熱交換媒体としても使われる。
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藤元正
藤元正 Fujimoto Tadashi
アイアンマンに出てくる「アークリアクター」は原料にパラジウムを使ったり、胸に入れている小型タイプだけで発電量が原発2基分とか、あまりにトンデモな話になっていますが、SFなので仕方がありません。ARCというネーミングも、たぶんアイアンマンのを流用したのでしょうね。

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