「化成」の売却交渉本格化。日立のグループ再編、次の企業はどこだ!?

日立金属が焦点に

日立製作所の東原敏昭社長

 日立製作所が、日立化成の売却で昭和電工と交渉に入っていることが明らかになった。昭和電工による買収が実現すれば、売上高は単純合算で約1兆7000億円となり、信越化学工業や三井化学を抜いて国内化学業界4位、世界でも存在感を示せる規模となる。ただ、両社の取り組む高機能素材は企業規模と競争力が必ずしも直結しない。次世代技術の情報戦と、異なる個性を持つ事業群を伸ばす経営が重要になる。  日立化成の買収は他の化学大手にも魅力的だが、全株式を取得すれば9000億円とも想定される買収金額や統合の難しさがネックだった。ある総合化学首脳は「統合作業の煩雑さを考えると、丸ごとの買収は難しい」と語り、早々に買収競争を離れた。リチウムイオン電池の技術革新が起き「負極材の優位性がいつまで続くか」(別の総合化学首脳)と指摘する声もある。  昭和電工と日立化成は、半導体や自動車など向け高機能素材で高シェア製品を持つ。同分野は顧客業界と密に協力して開発するため、“素材のセット購入”のような即時のシナジーは難しい。高シェアの企業同士が得られる顧客業界の情報を駆使し、第5世代通信(5G)などの次世代領域を中期的に飛躍させることがカギとなる。  昭和電工は黒鉛電極やアルミ、ハードディスクといった異なる特徴を持つ事業群を『個性派事業』として伸ばしてきた。事業領域が多岐にわたる日立化成の取り込みも、他社に比べ親和性がありそうだ。森川宏平社長は常々、黒鉛電極で稼いだ資金を活用し、情報電子化学品やパワー半導体材料などの成長を図るとしていた。課題も飲み込み、次の成長へ向け大型買収に踏み切るか注目される。  一方、日立化成を売却する日立製作所は上場子会社を中心としたグループ再編の総仕上げに入っている。グループ挙げて推進する社会イノベーション事業との親和性が薄く、半導体市況などによって業績変動の大きい事業体質も敬遠される。  日立製作所は2000年前後からボラティリティーが高い事業の切り離しを進めてきた。半導体事業にはじまり、ハードディスク駆動装置(HDD)や中小型液晶パネルなどを売却・事業統合して遠ざけた。この流れの先に今回の日立化成売却も位置付けられる。  日立化成は同業の三菱ケミカルホールディングスや住友化学、旭化成と比べて化学専業のイメージが強い。批判されることも多いコングロマリット経営だが、需要変動の波を全体で吸収する事業構造は景気後退局面にこそ威力を発揮する。日立グループに属して事業の多角化に一定の制約があった日立化成にその責任を全て押しつけるのは無理がある。  また日立化成は業績低迷に加え、18年には検査データ改ざんが表面化し、企業風土の見直しも課題となっている。昭和電工が買収すれば日立製作所と日立化成の親子双方にとってメリットがありそうだ。今後の日立グループの再編は“御三家”最後の一角である日立金属の行方に関心が移る。 (取材・鈴木岳志、梶原洵子、江上佑美子) <関連記事>

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