今、突きつけられるサプライヤーの仕事とは

連載・車部品の新たなカタチ♯7

「完成車メーカーとサプライヤーの間で、車作りの垣根が無くなり始めている」と独ボッシュのマルクス・ハイン取締役は指摘する。完成車メーカーが「CASE(コネクテッド、自動運転、シェアリング、電動化)」といった新技術・サービスの対応に追われるためだ。ある車メーカー首脳は「(走る・止まる・曲がるといった基本要素などの)既存領域は気心を知れたサプライヤーに委ねていきたい」と吐露する。加えて、本格化する「MaaS(乗り物のサービス化)」に向けても、部品各社の役割は高まるとみられ、創意工夫や付加価値の創出が期待される。 こうした窮状に応えようと、サプライヤーは部品の単品売りではなく、モジュール化やシステム化に注力してきた。M&A(合併・買収)などで規模の拡大や技術・地域の補完をし、提案力を磨いている。車作りにおけるサプライヤーの存在は日増しに強くなっており、「車の魅力を高めるという点でサプライヤーの役割が期待されている」とローランド・ベルガー(東京都港区)の長島聡社長は分析する。若者の車離れや尖った車の開発など既存の車業界の課題解決に向けて、サプライヤーが果たす役割が大きくなっているという。 さらに、車の付加価値は車内のアプリケーション(応用ソフト)や車を用いた移動体験など「MaaS(乗り物のサービス化)」分野にシフトしつつある。サプライヤーはシステムとしての提案だけでなく、サービスを見据えた技術が求められることになりそうだ。サプライヤー再編に関わってきた米投資ファンド、コールバーグ・クラビス・ロバーツ(KKR)の日本法人KKRジャパン(同千代田区)の平野博文社長は「今後はMaaSに対応するような異業種との大胆な提携が(部品業界で)起こってもおかしくない」とみる。 すでにボッシュはシェア事業に乗り出したほか、日立オートモティブシステムズ(同)は日立製作所のIoT(モノのインターネット)共通基盤「ルマーダ」と連携を深め、MaaS領域で存在感を示そうとする動きもある。 だが、完成車メーカーだけでなく、移動ビジネスに触手を伸ばす米IT大手ですらMaaSのビジネスモデルを確立できていない。MaaSユーザーの需要が地域や年代ごとに異なるほか、自動運転の法整備が地域ごとにまちまちなためだ。 長島社長は「ここに日本の強みを発揮できるのでは」と指摘する。日本の自動車産業が得意とする“すりあわせ”がMaaS対応に役立つという。海外では部品メーカー側が主導して汎用性の高い部品をスピーディに用意する一方で、日本の部品メーカーは時間はかかるものの、開発段階から密に連携し多様な話し合いをして豊富なアイデアを出す。こうしたプロセスが消費者のニーズなどを車両レベルまで落とし込んだサービス設計の完成度を高めるかもしれないとの見方だ。自動車産業に詳しいINCJ(同)の志賀俊之会長も「ケイレツ自体には優位性があり、マインドセット(思考様式)を変えることが重要だ」と話す。  ただ、志賀INCJ会長は「既存のビジネスに悪影響を与えようとも、(MaaSの領域で)完成車メーカーに対して忌憚(きたん)のない意見をぶつける姿勢が必要になる」とも訴える。これまでサプライヤーは完成車メーカーに従属してきた。変革を迫られる車業界にあって、完成車メーカーと対等な立場で業界をリードする覚悟が、サプライヤーに求められている。

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