学生起業家が開発、「人を軸に本を探すアプリ」とは?

読書通じて「考える力」養って

 あなたは普段、読みたい本をどうやってさがしているだろうか。映像化されて話題になった本、書店でふと目に留まった本、ECサイトで人気の本・・・。選ぶ基準は人それぞれだが、1年間に約75,000冊もの新刊が出版される中、読んで良かったと思える本に巡り合うことは本当に難しい。  そんな本選びを助けてくれそうなアプリが10月にリリースされた。それがソーシャルリーディングアプリ「ReadHub」だ。「自分が信頼している人、専門性が高い人、価値観が近い人から読みたい本が探せる」という新たな切り口のアプリだが、このアプリを考えたのは読書にほとんど興味がなかったという現役大学生だ。アプリ開発の経緯や、学生起業としての苦労や展望を聞いた。(聞き手・狐塚真子)  -そもそも「ソーシャルリーディング」とは何ですか?  メディアを利用して、読書にまつわる情報を共有し、読書体験の向上や、読書を通じて他の人と繋がることを指します。読んだ本のアウトプットをする場として活用したり、他の人が書いた本の感想や解釈を読んだりすることで、自分に合った本を知ることができます。  ーこのアプリを制作したということは、青木さんはもともと読書がお好きだったのですか?  実は大学に入るまで、読書には全く興味がありませんでした。  大学に入学すると、周りには優秀な学生が沢山いるので、劣等感を感じることが多く、「学ぼう」という意欲が自然と沸いてきました。そこで読書の習慣を身につけようと、本をアマゾンなどのECサイトで探していましたが、レビューに対する信憑性の低さなどから不信感を抱いたり、自分に合った本を見つけることが結局できませんでした。  そんな中、教授や自分が尊敬する先輩の勧める本を参考にして本を選んでみると、読みたいと思える本に巡り合うことができました。人が勧める本は、その人の経験やこれまでに読んだ本があった上で存在するはず。だからこそ「自分が尊敬している人や、業界の著名人など、『人』を軸に本選びができる機能がインターネット上にあると便利だな」と思ったのがアプリ開発のきっかけです。  このアプリが実名制であるのは、その人の経歴やバックグラウンドが分かるようにしたかったからです。今自分が所属している会社や大学名、役職なども詳細に記入してもらう仕組みになっています。  本を通して学ぼうという意欲があり、アウトプットに対して価値を感じている方をまずはターゲットとしています。  -実際にアプリを利用してみると、大学生同士でフォローし合っているのを見つけました。著名人をフォローするのではなく、一般の人同士が繋がり合うメリットは何でしょうか?  「自分と同世代の人が普段どんなことを考えているのか」ということを本を軸にして見つけられることではないでしょうか。自分と同じ本を読んでいる人がいたとしても、本の解釈や「参考になった」と感じる部分は人によって様々。その違いを感じ取ることができるのがこのアプリの魅力だと思います。  -TwitterなどのSNS(ソーシャルネットサービス)に読書記録用のアカウントを作って感想などを発信している方もいますが、それとの違いは何でしょう。  Twitterの場合は、その人が読んだ本がどんどん流れていってしまいますが、ReadHubの場合は画面上に本がストックされていく仕組みです。だから同じような価値観をもった人を見つけやすく、「この選書ならフォローしてみたいな」とすぐに分かるはずです。  SNSに同時投稿ができる機能もあるので、Twitterで読書用のアカウントを持っている人も、このアプリを活用してほしいですね。 -青木さんは現在大学2年生ですが、どういう経緯で起業したのですか?  高校生まではサッカーや受験勉強に励んでいましたが、大学に入ってからは打ち込めることがなく、燃え尽きてしまった感じでした。  慶応の湘南藤沢キャンパス(SFC)には高校生の時から起業している人や、大学の入学と同時に起業した人など学生起業家がとても多いです。僕自身も起業家支援団体にも所属していたので、学生起業はとても身近なものでした。そんな中、昨年の冬に起業家育成プログラムに参加し、それがきっかけで起業することを決めました。  -起業しようと決心されてから、まだ1年も経っていなかったのですね。アプリをリリースするまでの過程を教えてください。  「人を軸に本を探すサービス」にしたいという大枠のアイデアが固まり、起業家支援団体で一緒に取り組んできた仲間の中から、自分の事業に参加してくれるメンバーを誘いました。冬から春にかけては、サイトの開発を進めるかたわら、書店にいるお客さんに対して「本を選ぶ基準」や「アウトプットの仕方」など、サービスのキーコンセプトになりそうなことをヒアリングしていきました。  アプリの制作と同時に、本のレビュー執筆や、自社メディア「ReadHub TIMES」の取材に応じてくれる著名人の方への交渉も行っていました。facebookのmessengerアプリやTwitterでDMを送ったり、その方の講演会に参加していきなり依頼したこともありました。  -パワフルですね…書店で見ず知らずの人に声を掛けたり、著名人の講演会ににアポなしで突撃したりすることに抵抗は無かったのですか?  最初は苦でした。でも「アプリを開発してより多くの人に届けたい」という強い思いがありました。そんな準備期間を経て、10月17日にはアプリ版をリリースすることができました。  -リリースされて間もないですが、ユーザーの反応はどうでしょうか?  有り難いことに、会社のお問い合わせフォームや、ReadHub公式TwitterのDM宛てに「こういうアプリを求めていました」と沢山のメッセージを頂いています。「自分が今読んでいる本について、様々な解釈が見られたり、人を軸に本選びが出来る」という点に魅力を感じてくれているようです。  -今後アプリの認知度を上げていくために、どのような施策を考えていますか?  口コミでの広がりを期待しています。また、自社のインタビューメディア「ReadHub TIMES」では、様々なジャンルのプロフェッショナルにアタックしていき、その人のフォロワーや知人に対してアプローチしていきたいと思っています。  -このアプリのターゲットは「読書好きかつアウトプットに価値を感じている人」ということでしたが、今後読書に興味のない人に対しては、どうアプローチしていきますか?  読書に興味がないのは、これまで良い本に巡り合えていないからだと思います。自分にとって本当に読む価値のある本に巡り合えば、読書に対して興味も出てくるはずです。 例えば、ユーザーが学生の場合、自分が入りたいと思っている会社の社長の読んでいる本が可視化されていたら、自分が読むべき本が分かるし、自分の目標に近づくために読書を活用することができます。このようなアプローチでユーザーを獲得していきたいと思います。  僕自身、読書や自社メディア「ReadHub TIMES」の取材を通して多くの著名人の方とお話しする中で、読書の大切さを再認識し、社会を今までとは違う視点で見られるようになりました。  今は、一瞬で理解できるものでないと受けが悪く、キャッチーなものがより好まれる時代。だからこそ、自分で考える力が大切になってきていると思います。  先日、スピッツの歌を聞いていた時にふと思ったのですが、彼らの歌の歌詞には色んな意図が込められていて、歌詞に深みがありますよね。意識的に理解しようとしなければ、理解できないものがほんの一世代前には存在していたのだと感じました。時間や労力が省かれ、便利な時代になったからこそ、読書を通じて自分で考える力を養ってほしいと思います。

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