日産系のケイレツ解体は、競争力向上をもたらしたか

連載・車部品の新たなカタチ♯4

日産自動車系列サプライヤーは、20年前にカルロス・ゴーン前会長(当時、最高執行責任者)が始動した“ケイレツ解体”に翻弄(ほんろう)されてきた。その後日産と資本関係にあるサプライヤーはほとんどなくなって小康状態が続いていたが、最近は「CASE(コネクテッド、自動運転、シェアリング、電動化)」の台頭や仏ルノー・日産連合に三菱自動車が合流したことで新たな動きが出始めている。 最も日産と結びつきが強かった旧カルソニックカンセイ(現マレリ)が今年、欧米フィアット・クライスラー・オートモービルズ(FCA)の自動車部品部門、マニエッティ・マレリ(MM)と経営統合し、日産との資本関係は解消した。CASE時代を見据えた大型再編だ。売上高は約146億ユーロ(約1兆8250億円)と倍増。日産向けが8割だった売上高はFCAと日産を合わせても5割程度となり、受注ベースでは新規取引が増加したという。 今後も「既存顧客との関係は維持しつつ、独立系サプライヤーとしての成長を描く」(ベダ・ボルゼニウス最高経営責任者〈CEO〉)考えで新潮流に合わせて生き残りを図る。 一方で、中核部品の領域では日産との関係を生かす動きもある。日産と取引の多いユニプレスは3社連合の誕生に合わせて、提携戦略を積極化。三菱自系で同業のメタルテック(愛知県小牧市)の株式33・3%を10月に取得。日産と三菱自が軽自動車を共同開発するなど提携を深めたことに伴う協業で、日産だけではなく三菱自に向け拡販する。相互で生産拠点の活用や部品の共同提案をしていく方針だ。 また、日産が大株主のジヤトコは、生産改善の技術を企業連合や部品メーカーと共有し合う。手がける変速機は品質向上やコスト低減に密接に関わっており、供給網全体が最適となるために、生産改善やコスト競争の側面で大きな役割を果たす。「資本関係だけでなく、サプライチェーン(供給網)として有機的に結びついていることが重要視されている」(中塚晃章社長)。 ただ、電動化に伴い、変速機などは付加価値の低下を危惧する見方もあり、部品の重要性や供給網の中でも位置づけが変わる可能性がある。そのため、「生き残りをかけて(他社との提携により)専業メーカーから脱却することも選択肢になってくるだろう」と危機感を募らせる。 ジヤトコとは対照的に日産の完全子会社を離れ、中国の再生エネルギー大手エンビジョングループ傘下で活路を見いだすのがエンビジョンAESC(神奈川県座間市)だ。同社の前身は日産の電池子会社で、電池事業の中核を担ってきた。当初、日産が同社株式を全て売却する方針だったが、20%の株式を残した。「電池調達の安定化を図った」(日産関係者)とされる。 松本昌一社長兼CEOは「日産の電気自動車(EV)などに供給してきた実績を強みに、事業拡大を狙う」と語気を強める。エンビジョングループの支援を受け、中国で新工場建設を決めた。日産と培った電池技術やノウハウを武器に、中国市場の電動化領域で攻勢をかける。 これまで日産系サプライヤーは試練の連続だった。99年に日産が経営危機へ陥った際にはゴーン前会長がケイレツ解体を断行。1年前にはゴーン前会長が逮捕され、日産とルノーの関係はぎくしゃくし、3社連合のシナジーの恩恵は当初想定より見込みにくくなった。加えて、業績不振に陥った日産のリストラは現在進行形。業界の中でも厳しいとされる同社の原価低減に応え続けなくてはいけない。日産系サプライヤーは売上高に占める日産の売上高が6割以上とされ、長引く日産の経営問題がサプライヤーの業績を蝕む。日産依存から脱却し競争力を磨いてきたが、試練の日々が続いている。

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