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リース取扱高腰折れか、各社が期待する次なる成長株

高水準で推移してきたリース取扱高の先行きを懸念する声が出ている。9月までは消費増税前の駆け込みや、情報通信機器における基本ソフト(OS)の更新といった需要が取扱高を押し上げた。10月以降はこれらの反動減に直面する上、日銀がマイナス金利政策を深掘りした場合は影響を受ける恐れもある。リース各社は収益源の多様化を従来以上に進める必要がありそうだ。

リース事業協会がまとめた2019年4―9月のリース取扱高は、消費増税前の駆け込み需要が寄与し、前年同期比14・2%増の2兆6983億円だった。けん引役は情報通信機器で、同28・8%増を記録。米マイクロソフトがOS「ウィンドウズ7」のサポートを20年1月に終了することに伴い、OS移行の機運が高まった。

19年9月単月では、リース取扱高が前年同月比34・8%増。情報通信機器は同57・8%の伸びを記録した。軽減税率導入に伴うPOSレジの更新ニーズもあったという。だが、リース協の関係者は「10月以降は間違いなく(取扱高が)下がる」と気をもむ。

リコーリースは19年4―9月期の取扱高・事業投資額が前年同期比21・8%増の2490億円で、増加分のうち「200億円前後が消費税の駆け込み需要による」(瀬川大介社長)。加えて情報関連機器のOS移行ニーズも寄与したが、瀬川社長は「反動減はある。(19年度の)第4四半期は注意したいし、来年度上期はもっと効いてくる」と警戒する。

ただ、IT分野の先行きについては前向きな見方も多い。東京センチュリーの馬場高一取締役専務執行役員は「省力化や働き方改革でIT投資を積極化する企業が多く、大きくは落ちない」と展望。日立キャピタルの川部誠治社長は、新たな成長株として「第5世代通信(5G)が入ってくる」とみている。

もっとも、19年度後半の不確定要素という観点では、日銀がマイナス金利政策を深掘りする可能性が指摘されている。そうなれば「事業会社が融資による資金調達を選ぶ動機が強くなる」(今関智雄NECキャピタルソリューション社長)ことでリース取扱高が減ることも考えられる。

これまでリース各社は多角化を進めてきたものの、環境変化に備える意味でも一層の加速が望まれそうだ。オリックスは不動産事業や海外事業を伸ばしており、「国内のリースやローンは減っている」(矢野人磨呂執行役)。収益性の見込める案件に絞り込んでいるため、低金利環境の影響は少ないとする。

リコーリースは集金代行のような手数料ビジネスに、東京センチュリーは海外での航空機リースに力を注ぐ方針を示すなど、各社は新たな収益源の確立に意欲的だ。今後はそうした施策の実効性向上が試される。

(取材・斎藤弘和)

日刊工業新聞2019年11月8日

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