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製薬大手の業績、上方修正が相次ぐ理由

ロイヤルティー収入・コスト削減寄与

製薬大手で、業績の上方修正が相次いでいる。いずれも主力製品の販売が当初の想定を上回っているためで、他社からのロイヤルティーの受領やコスト削減も大きく寄与する。重点投資を続けてきた主力製品の利益貢献が顕著だ。(取材・小野里裕一)

営業益上振れ

各社、主力製品が適応症の拡大などで欧米や日本市場を中心に売り上げを伸ばしており、販売予想の上方修正が相次いだ。疾患では医療ニーズの高いがん領域が中心だ。主力製品には利益率の高い自社開発品が多く、2020年3月期連結業績見通しで、営業利益(国際会計基準)の上振れが目立つ。

アステラス製薬は、営業利益が期初予想比340億円増の2630億円になりそうだ。前立腺がん治療剤「エクスタンディ」が適応症の拡大で、早期ステージ患者の治療にも使えるようになり、欧米で販売が当初の計画を上回っている。期待をかける国内の新製品群も、骨粗しょう症治療薬「イベニティ」を中心に好調だ。

日・欧で拡大

第一三共は、営業利益が期初予想比250億円増の1250億円になりそうだ。利便性の高い口腔内崩壊錠(OD錠)を投入した抗凝固剤「エドキサバン」が日本や欧州で拡大し、貧血治療剤「インジェクタファー」も米国で好調に推移する。英アストラゼネカと結んだ抗体薬物複合体「トラスツズマブ デルクステカン(一般名)」(DS―8201)の戦略提携で、研究開発費が低減することも寄与する。

エーザイは、営業利益が期初予想の1030億円から1100億円に上振れる。抗がん剤「レンビマ」が肝細胞がん治療で使用が広がり、米国や中国を中心に拡大。想定を超える販売を続ける。抗がん剤「ハラヴェン」、抗てんかん剤「フィコンパ」などの世界戦略品も軒並み好調で、売上原価率の改善も利益を押し上げる。

赤字幅改善

武田薬品工業は、営業損益が7月公表の1660億円の赤字から1100億円の赤字に改善しそうだ。営業赤字の縮小幅は560億円。企業結合会計にかかる費用の通期の前提を修正したため。さらに、全社的な経費削減策の伸展を織り込むほか、アイルランドの製薬大手シャイアーの統合に伴うコストシナジーも赤字幅の改善に寄与する見通し。製品面では主力の潰瘍性大腸炎・クローン病治療剤「エンティビオ」が好調で、期初の販売計画を見直したほか、多発性骨髄腫治療薬「ニンラーロ」も堅調だ。

12月期決算の中外製薬も通期の連結業績見通しを上方修正し、本業のもうけを示すコア営業利益(国際会計基準)は1月の期初予想に比べ、750億円増の2180億円に伸びそうだ。中核のがん領域で抗体医薬品の国内販売が軒並み好調で、自社創製の血友病A治療薬「ヘムライブラ」も従来品からの切り替えが進む。ヘムライブラは親会社のロシュも扱っており、販売量に応じて中外製薬はロイヤルティーを受け取れる。

ロシュは欧州などでヘムライブラの販売が好調で、ロイヤルティーは当初の予想を大幅に上回る見通しだ。

日刊工業新聞2019年11月7日

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