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石灰の性質を生かした、CO2排出量8割減らす蓄熱システム

愛知製鋼が開発
 愛知製鋼は豊田中央研究所(愛知県長久手市)と近江鉱業(滋賀県米原市)と共同で、液化天然ガス(LNG)を燃料とした燃焼式ボイラに比べ、二酸化炭素(CO2)排出量を約8割削減できる蓄熱システム(写真)を開発した。国内での原料調達がしやすく、安価な石灰を蓄熱材に利用した。蓄熱量の拡大や効率化、低コスト化などを進め、2030年の実用化を目指す。

 石灰は400度C以上の熱を加えると水を放出しながら化学変化して熱を蓄え、逆に水蒸気と反応すると放熱して元に戻る性質を持つ。この仕組みを応用した。豊田中研は基盤技術の確立を、近江鉱業は原材料の調達、供給を担った。開発した蓄熱材は蓄熱密度が1リットル当たり1・6メガジュールで、1000回繰り返し利用できる。石灰を焼成しプレート状の蓄熱材に成形することで、繰り返し利用できる構造を確立した。

 ステンレス鋼を生産する刈谷工場(愛知県刈谷市)で加熱炉から出る廃熱を回収し、その熱をステンレス鋼を洗浄する際の酸液の加熱に利用する実証試験を行った。従来ボイラに使っているLNGの5%分をまかなう計算で、CO2排出量を82%、コストを75%削減できた。

 今後は蓄熱量を約400倍まで高めて、蓄熱装置の実用化を目指す。愛知製鋼の野村一衛執行役員は「工場だけでなく送配電などへの応用を視野に、他社との協業も進めたい」と意欲を示す。

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