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化学・繊維各社、国内研究施設の新設相次ぐ

社内の研究機能を融合した研究所の新設で、高機能品の開発強化
化学・繊維各社、国内研究施設の新設相次ぐ

主な研究所の新・増設

 化学・繊維メーカー各社が国内拠点で研究施設を新設する動きが相次いでいる。旭化成ケミカルズは水島製造所(岡山県倉敷市)内に分散していた研究機能を統合した新棟を建設する。帝人は松山事業所(松山市)に高機能素材開発の中核拠点を開設した。中国メーカーが汎用化学品の生産を増強する中、国内各社は自動車部材などに使う高機能品の生産に経営資源を移している。社内の研究機能を融合した研究所の新設で、高機能品の開発強化につなげる。

集約で効率化


 旭化成ケミカルズは数十億円を投じて2018年度までに新研究棟を完成させる。水島製造所にはモノマー・触媒研究所、化学・プロセス研究所があるが建設から35年たち老朽化。分析・解析設備や分室も別の場所にあるため、これらの機能を集約して効率化する。新製品の実験工場となるパイロット設備の大きさも倍増させる。

事業横断型


 帝人は本格稼働した技術開発センターで高機能素材の開発・評価から製品化、サービスまで事業横断型のソリューション(問題解決)に迅速に対応できる体制を確立した。高機能素材とITが融合した高靱(じん)性軽量構造材の開発などを担う。

 主要顧客の拠点近くに研究所を新設する動きも活発化している。宇部興産は堺工場(堺市西区)に約30億円を投じ、リチウムイオン二次電池(LIB)材料などの機能化学品研究拠点を新設する。16年7月に完成の予定。オープンラボも設けてLIBを生産する関西の電機メーカーや学術研究機関との連携を強化する。

 日亜化学工業はセイコーエプソン高木事業所跡地(長野県下諏訪町)を取得し、発光ダイオード(LED)などを基にした光半導体光源の研究開発拠点を建設する。長野県岡谷市の拠点を移転・拡充し、16年12月に完成する予定。諏訪地域にはカメラ、レンズメーカーの拠点が集積しており、社外者が分析装置を利用できる共同研究エリアを設置。技術融合による新たなビジネス展開を見込む。

汎用品を縮小


 化学・繊維業界では中国メーカーによる過剰生産でナイロン原料など汎用化学品の採算悪化が長期化。国内の汎用品生産を縮小し、高機能品生産で生き残りを図ろうとしている。三菱ケミカルホールディングス(HD)や旭化成は化学系事業会社の統合に乗り出すなど、経営資源の融合で競争力を高める動きが加速している。
日刊工業新聞2015年09月09日 素材・ヘルスケア・環境面
村上毅
村上毅 Murakami Tsuyoshi 編集局ニュースセンター デスク
化学・繊維品は中国メーカーなどの汎用品との競争がし烈。高機能化で生き残りをかける。

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