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ニッポンの家電、生産量と単価の推移から見える栄枯盛衰

 冷蔵庫や洗濯機など、日々の生活を便利にしてくれている家電製品を、多くの方が使っていることだろう。これら身近な家電製品は、いま日本でどのように生産されているのだろうか。その動きについてみていこう。

安定推移の家事用機器


 鉱工業指数では、「電気機械工業」の品目として、「電気がま」「電気冷蔵庫」「クッキングヒーター」「電気洗濯機」「電気掃除機」の5品目と、これらをまとめた細分類の「家事用機器」として指数値を公表しており、国内での生産、出荷、在庫等の動きをみることができる。

 「家事用機器」の動きをみてみると、生産・出荷ともに2014年第1四半期に最高水準に到達し、その後、大幅な低下をみせている。これは2014年4月の消費税率引き上げの影響による駆け込み需要と、その反動減が現れているようだ。2015年以降は、上昇・低下はあるものの激しい動きはみられず、指数水準は85~110の間で推移し、安定した動きとなっている。

 ちなみに本年10月の消費税率引き上げの影響に関しては、8月までの時点では、前回2014年の消費税率引き上げ時のような生産・出荷の大幅な上昇はみられていない。

品目ごとにみてみると


 続いて、「家事用機器」の内訳品目ごとの生産と出荷の動きをみてみよう。生産については、「電気冷蔵庫」「電気洗濯機」のピークは、2014年第1四半期となっており、出荷については、全ての品目で2014年第1四半期がピークとなっている。前回の消費税率引上げ前から多くの品目で出荷は高い水準が続き、ついに引上げ直前の2014年第1四半期にピークを迎えた、そんな様相になっている。

生産数量は減少傾向、生産単価は増加傾向


 次に、生産数量について、2000年と直近の2018年を比べてみると、「クッキングヒーター」の生産数量は大幅な増加や減少はみられない。一方、「電気洗濯機」「電気掃除機」は4分の1程度まで、「電気冷蔵庫」は約半分まで、「電気がま」については4分の3程度まで、生産数量は減少となっている。

 続いて、1台あたりの生産単価をみると、「クッキングヒーター」は減少となっているが、「電気がま」「電気冷蔵庫」「電気掃除機」は1.5倍程度、「電気洗濯機」については2倍弱まで生産単価は増加している。
 以前のひと言解説(日本の経済成長をけん引してきた産業の移り変わり;鉱工業生産指数(IIP)基準改定で振り返る鉱工業の構造変化)で紹介したが、「電気機械工業」については、産業ウェイトの変化をみると、1955年基準-1975年基準-1990年基準と、電子化・情報化の進展に伴いIIPにおけるウェイトを高めていったが、その後、海外生産へのシフトが多くなったことから、2015年基準ではウェイトは低下した。

 まだ家庭への普及途上にあると考えられるクッキングヒーター(2014年の普及率は23.9%(二人以上の世帯)(総務省「平成26年全国消費実態調査」)を除き、今やほとんどの家庭に普及している他の家事用機器については、国内生産数量は減少する一方、1台あたりの生産単価は増加している。私たちの身近な家事用の家電製品は、国産品については「高機能化」「高付加価値化」が進んでいることが推測される。

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神崎明子
神崎明子 Kanzaki Akiko 東京支社 編集委員
私たちの身近にある家電製品については、海外生産が進み、輸入品もよく見かけるようになったが、今後、国産の家電製品はどのように変わっていくのだろうか。輸入品でも、低価格商品だけでなく、掃除機など高価格商品も出回るようになっており、今後の行方が気になるところである。

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