ダムのリニューアルで昨今の異常気象への対応を

おすすめ本の本文抜粋「トコトンやさしいダムの本」

帝釈川ダム リニューアル前(写真提供:鹿島建設株式会社)

 ダムの建設は、戦後の電力不足や高度成長期での水需要の増加などを受けて1960年代から1970年代にかけて増加していきました。その後は徐々に減少し、昨今の社会情勢などの影響も受けて、ここ最近は非常に少なくなっています。一方で、最近頻発している異常気象(集中豪雨やゲリラ豪雨など)が原因の異常出水による洪水被害が増加しています。このような中で、ダムによる洪水調整機能は重要な役目を果たすのですが、今あるダムだけでは十分な対応が難しいのも事実です。  しかし、今からダムを新規に造りましょうといっても、すぐにできるわけではありません。いくらダム本体の建設が速くなっても、ダム計画から完成までには何十年もかかります。そこで、今あるダム(既設ダム)の水を貯める量を増やしたり、洪水調整能力を高めたりする工事(ダムのリニューアル)が進められています。  ダムに貯める水の量を増やす工事を嵩上げ工事といいます。既設ダムの天端にコンクリートをただ積み上げただけでは、ダムが転倒したり、滑ったりしてしまいますので、既設ダムの下流側に新たにコンクリートを積み上げ、ダムの高さを高くしていきます。この時、既設ダムと新設していく部分がちゃんとくっつく(一体化)よう、既設ダムの表面を削って新設部分と一体化するようにします。  ダムの洪水調整能力を高める工事としては、既設ダムの真ん中に穴を開けて、新たに放流施設を設置する工事を行います。当然既設ダムを使いながら行う場合が多いので、上流側には貫通した時に水が入り込まないような設備(仮締切設備)を設けます。この他にも、発生の可能性がある大地震に備えて、古いダムの耐震補強工事も行われています。  新しいダムの建設が減少していく中で、ダムのリニューアルは増々重要になっていくと思います。 書籍紹介 書名:今日からモノ知りシリーズ トコトンやさしいダムの本 著者名:溝渕 利明 判型:A5判 総頁数:160頁 税込み価格:1,650円 日本の年間降水量は世界平均の約2倍だが、水資源量では世界平均の半分くらいであり、決して水の豊かな国とはいえない。ダムは生活・工業用水などの貯蔵だけでなく、防災の観点からも必要不可欠。本書ではダムの種類や特徴、ダム建設の技術や建設場所の選定、ダムが備える機能、ダムの役割などをわかりやすく解説する。 著者紹介 溝渕 利明(みぞぶち としあき) 法政大学デザイン工学部都市環境デザイン工学科教授 [専門分野]コンクリート工学、維持管理工学 1959年 岐阜県生まれ、1982年 名古屋大学工学部土木工学科卒業、1984年 名古屋大学大学院工学研究科土木工学専攻修了、1984年 鹿島建設(株)に入社、技術研究所に配属、2001年 法政大学工学部土木工学科・専任講師、2003年 法政大学工学部土木工学科・助教授、2004年 法政大学工学部都市環境デザイン工学科・教授、2007年 現在に至る。 2013年 公益社団法人日本コンクリート工学会・理事、2016年 一般社団法人ダム工学会・理事 [主な著書] 『よくわかるコンクリート構造物のメンテナンス』日刊工業新聞社(2019) 『今日からモノ知りシリーズ トコトンやさしいダムの本』日刊工業新聞社(2018) 『図解絵本 工事現場』監修、ポプラ社(2016年) 『コンクリート崩壊』PHP新書(2013年) 『見学しよう工事現場1~8』監修、ほるぷ出版(2011~2013年) など 販売サイトへ 目次抜粋 第1章 ダムのここだけは知っておこう 地球上で人が利用できる水の量は? 「全人類で琵琶湖5000杯分」/ゲリラ豪雨が日本を襲う 「短時間の大雨への対策」 第2章 ダムの種類とその特徴 ダムの形はどうやって決めるの? 「決め手は地盤の強さだけではない」/ダムにはさまざまな施設がある 「基本構造を知ろう」 第3章 ダムの計画と設計 ダムを造る三原則 「転倒、滑動、破壊の安全対策」/ダムを建設する場所はどうやって決めるの? 「さまざまな条件から最も効果的な場所を探る」 第4章 ダムを造るために必要な設備 コンクリートダムに使う材料 「コンクリートに混ぜる砂利の大きさはダチョウの卵大」/フィルダムに使う材料 「コンクリートは使わず、天然の材料のみ」 第5章 ダムの施工技術と工法 堤体掘削 「ダム本体を据え付けるために、山の表面部分を削り取る」/グラウト 「水が漏れないようにする陰の主役」 第6章 ダムの維持管理とリニューアル ダムの寿命はどれくらい? 「維持管理が長寿命の決め手」/ダムの決壊 「下流の街に甚大な被害を及ぼす」 第7章 ダムのいろいろ ダム建設による経済効果 「地元企業を巻き込んだ事業」/ダムとの共生 「住民や自然環境とともに歩んでいく方法」 ↓画像をクリックしてamazonへ↓

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