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三井物産の社内で活躍する相撲キャラの正体

AIチャットボット運用
三井物産の社内で活躍する相撲キャラの正体

オリジナルキャラクター「山本山」の登場で、ログの蓄積にもつなげる

 三井物産が社内向け基幹システム(ERP、SAPのシステム採用)の運用サポート業務に人工知能(AI)を使ったチャットボット(自動応答ソフト)を導入し、効率化を進めている。想定質問に対する回答の蓄積によって独自に作成したキャラクターが“出世”する運用を実施。実際に社内ユーザーも増えていると見られ、ログの蓄積にもつながっているようだ。(浅海宏規)

 三井物産では、社内向けヘルプデスク「MIRAIデスク」で問題解決やマニュアルの整備に取り組む。これまでFAQ(頻繁に尋ねられる質問)は約1000件、マニュアルは約2000件と膨らみ、社員が回答までたどり着けない状況になりがちだった。

 「当初はチャットボットがFAQの代替になると考えた。実際に運用すると、補完する役割としての成果が大きい」と小林克之デジタル総合戦略部シニアマネージャーは振り返る。

 チャットボットは、りらいあデジタル(東京都渋谷区)のサービス「バーチャルエージェント」を活用。その際に意識したのが「回答率が悪いと、使われなくなってしまう。あわせて、愛されるキャラクターが必要と考えた」(小林シニアマネージャー)として生み出されたのが、オリジナルキャラクター「山本山」だ。

 バーチャルエージェントの導入企業においても、独自キャラクターを設定したケースは珍しいという。

 山本山は大相撲の番付をモチーフに、想定質問に対する回答の充実度やユーザーへの回答率を参考にして「序ノ口」、「序二段」などと段階的に昇進し、外見も変化させる仕組み。

 導入後の知見である「FAQでの検索になれる利用者ほど、文章で入力せず、単語やキーワードで質問するケースが多い」(基幹システム室の松谷悦子氏)点に着目。ユーザーが求める回答まで絞り込めるように選択肢をそろえ、対応できる機能も利用したという。

 チャットボットは2017年11月から導入し、現在の想定質問に対する回答は400を超え、山本山は三段目に昇進した。息の長いキャラクターとして、社内の問題解決と歩調を合わせながら出世を目指す。
日刊工業新聞2019年10月25日

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