メーター撮ってAIで読む、シンプルな“仮設IoT”は定着するか

各社各様の戦略を描く

GMOクラウドのシステムは、スマホでメーターを読み取り、画像をクラウドに送り認識処理する

 カメラと画像処理で仮設のIoT(モノのインターネット)システムを構築する試みが広がりつつある。工作機械の三色ランプや数字を読み取れば、個々の機械をネットワークでつながなくても工場の稼働状況を一覧できる。屋外のプラントでもメーターをカメラやスマートフォンで撮影してデータを集める製品も登場している。メーターを撮って人工知能(AI)で読む。シンプルな技術だが各社各様の戦略を描いている。  「化学系大手に使ってもらったところ反応はとても良い。積極的な会社は本当に動きが速い」とスカイロジック(浜松市北区)の南野真吾社長は声を弾ませる。画像検査で培った技術を基にメーター読み取りシステムを開発した。カメラの視野に流量計などのメーターの針や数字が収まれば、計算資源を増やせば最大999カ所まで読み取れる。現場で処理する小型パソコンも用意した。データをクラウドに送らず、現場で情報を処理できる。  メーターの読み取りAIは、既存のメーターを通信機能付きのスマートメーター(通信機能付き電力量計)に置き換えるまでのお手軽なつなぎ役として期待されている。デジタル改修の投資は重要設備から数年かけて進められる。メーターを交換できなくても、メーターの前にカメラを置けばデータがとれる。南野社長は「予算が足りず投資できなくても、データを集めたい設備は多い」と指摘する。そのため、つなぎと本設の両方を見据えた計画が必要にある。  重要なのは点検箇所はメーターだけではない点だ。炎や水の色など、数値化しにくく、人が見て判断していた箇所も自動化しないと省人化できない。南野社長は「官能検査は画像検査技術が生きる。メーター読み取りと画像検査を組み合わせて顧客を開拓する」と力を込める。  GMOクラウドはメーターをスマホで撮って値を読み取る「ハカルエーアイ」を展開する。カメラをメーターに常設するのはなく、点検時の入力機器としてスマホを使う。メーターに2次元コード「QRコード」のシールを貼り、写真と個々のメーターを照合して記録する。  点検員が点検漏れに気が付いて後から適当な数字を入れたり、品質不正など都合の悪い数値を改ざんすることを防げる。IoT営業推進グループの末舛仁史チーフは「点検漏れが発覚すると再発防止策はダブルチェック程度しかない。点検人員を2人に増やすと、コストも倍増していた」と説明する。AI読み取りで画像と数値の記録が残るとトレーサビリティー(履歴管理)の管理がしやすくなる。  アナログメーターやデジタルメーター、回転式メーターなど6種に対応させた。クラウドで認識や記録などを処理するため継続的に機能を改良できる。利用料は月額3万円にメーター一つ当たり300円。末舛チーフは「数に応じて割引プランを設計する」と話す。  日立製作所は電池だけで3―5年もつカメラ固定式の読み取り装置を提供する。フラッシュ撮影から画像処理、通信まで、無駄をそぎ落として消費電力を抑えた。1日1回、数値を報告するだけなら、単三電池で3年、単二電池で5年もつ。  電源や通信用のケーブルは要らない。無線距離は50メートル。8回中継できるため400メートルのエリアを監視できる。装置は防塵防水対応で、後付けすれば単体で機能する。日立の強みはIoT共通基盤「ルマーダ」との連携だ。メーターを読み取るカメラはデータ収集の端末に過ぎず、ルマーダとしてデータ解析や運用改善を売り込む。  NECは電力中央研究所とメーターの読み取り技術を共同開発した。NECは郵便区分機を約60年開発してきた。NECの文字認識技術と電中研の針式メーター読み取り技術を組み合わせた。  NECグループでは子会社のNECネッツエスアイもメーター読み取りシステムを展開する。制御盤などの表示部を撮影して、データ化する。社用スマホやオフィス機器などとの連携が強みだ。ライン異常や火災などの緊急事態は担当班の誰かが出るまで順番に電話を鳴らし続ける。  天井のネットワークカメラで工作機械の三色ランプの色を識別し、計量器の表示を読んで、制御システムにデータを送る。ネットワークカメラの首振りやズーム機能を使えば離れた装置の数字も撮影できる。電子てんびんなどの計測器はネットワークにつなぐ必要はない。部品や治具に貼られたバーコードも読める。カメラの首振り次第でデータを集められ、簡単にシステムを変更しやすい。  さらにキヤノンはデンソーウェーブ(愛知県阿久比町)の人協働ロボット「COBOTTA(コボッタ)」のアーム先端に載せる手元カメラを提供する。ロボットは手元カメラで正確な位置を測って部品をつかんで作業し、ネットワークカメラでラインの状況を把握する。  構築中のIoTの隙間を埋めて、試しにIoTシステムを組んで中で働く人が運用できるか検証しやすい。キヤノンの中西務FA事業販売推進担当主幹は「ロボットや画像処理の技術者でなくてもシステム構築できる」と胸を張る。 <関連記事>  カメラは装置内部の電流値や振動などは直接計れない。だが人間が目で見て確認していた情報は基本的にカメラと画像処理AIでデータ化できるようになってきた。AI技術は成熟化し、メーターの値を読み取るという付加価値の少なそうな用途から事業が立ち上がろうとしている。  今後は作業員の動作解析にも画像処理の応用が進むと期待される。作業者の反復動作をカウントして進捗(しんちょく)率を計って、作業者の動作や姿勢から身体負荷を計る技術はすでにある。これは作業者を助ける装着型ロボットやパワーアシストスーツの導入効果を計る基盤になる。  装着型ロボベンチャーと連携するリコーテクノロジーズ(神奈川県海老名市)の江間裕通執行役員は「大切なのはシステム提案。カメラ映像をもとに機械の稼働状況や作業員の動作を分析し、ソリューションを提案する力になる」と展望している。  現在は画像検査のスカイロジックは官能検査のデジタル化、GMOはスマホのクラウドサービス、日立はデータ解析など、自社の強みと読み取り技術を組み合わせて戦略を描き、製品を立ち上げている。  商品の種類がそろうとユーザーが喚起され市場も広がる。一度汎用性のあるカメラが導入されると、読み取り対象をメーターやランプ、作業員などと、必要に応じて増やしていける。  改善の定着後は常時計測しなくても、次の改善活動のタイミングでだけ算資源を割り当てる運用も可能だ。将来、SaaS(サービスとしてのソフトウエア)型の現場コンサルが可能になる。メーターの読み取りAIはスマートメーターへの交換を待つ間のピンチヒッターとして登場したが、そのまま定着してレギュラーになるポテンシャルを秘めている。 (取材・小寺貴之)

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