体へのフィットやしわを再現…アパレルCADに「3D化の波」

アバターで着こなし確認、普及へ各社戦略

衣服のシミュレーション左と実際の製造物(CLOバーチャルファッションのホームページより)

 アパレルCADに3次元(3D)化の波がおとずれようとしている。型紙を作る2次元(2D)CADは個人のデザイナーにも浸透したが、3DCADの普及率は数%台とみられる。コンピューターグラフィックス(CG)やシミュレーションの進化によって、体へのフィットやしわをバーチャルに再現できるようになってきた。2Dから3Dへの移行はCAD各社の戦略が現れる。  「2DCADはもう飽和したが、3Dの普及率は5%程度。まだまだ導入の余地は大きい」とユカアンドアルファ(東京都渋谷区)の出田滋東京本社マネージャーは力説する。  同社の2DCADと韓国・CLOバーチャルファッションの3D着装シミュレーターを連結させて、型紙設計とバーチャルな着こなし確認を同時に行う。型紙の寸法を調整すると3Dアバターが着る服にリアルタイムに反映される。  肩や袖口の引っかかり具合は、衣服をクリックして引っ張る度に自然なたるみやしわが再現される。生地の引長強度や曲げ強度、重さなどの物性値を個々に反映でき、アバターを歩かせればなびく様子を確認できる。  製品説明の場では、デザイナーは型紙をおこすパタンナーの仕事が、パタンナーはデザイナーの仕事が要らなくなるとため息をつくほどだ。3D着装シミュレーターの登場でアパレルに3Dモデリストという職種が生まれた。  東レACS(東京都港区)も3DCADを強化する。今秋にアバター全身の体形調整機能を追加。生地にかかる張力分布を計算し、体と服との隙間の分布なども計算できる。服飾系の教育機関に採用され、3Dを扱う人材育成が進んでいる。  売りは導入のしやすさだ。2DCADを導入済みのユーザーは、オプションとして年間6万円で3D機能を導入できる。着装シミュレーターなどは高性能GPU(グラフィックスプロセッシングユニット)を積んだパソコンを必要とする。加藤隆彦取締役営業部長は「高級機は100万円台になるが、我々はその数%」と説明する。  3DCADやシミュレーション技術の課題はデザインの時間短縮にはなるものの、成果物である型紙の品質が向上するわけではない点だ。効率が上がればデザインできる数は増えるが、仕様を満たせば完了する仕事ではなく、よりよいデザインを追求しがちだ。労働時間が短縮されるかどうかは契約や商習慣に依る部分がある。これが費用対効果の計算を難しくしている。  シミュレーションもまだ完璧ではなく、縫製段階の調整や手直しが必要になる。それでも3Dのおかげでデザインのイメージを伝えやすくなった。加藤取締役は「欧州では1人でデザインから生産まで統括する人が増えている。日本は分業が定着しているが、1人で担当できる領域は広がっている」と指摘する。単工程の効率でなく、全体の生産性を評価していく必要がある。

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