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30年度温室効果ガス26%減に向け「出でよ、省エネの達人!」

省エネルギーセンターの判治理事に聞く、省エネ対策
30年度温室効果ガス26%減に向け「出でよ、省エネの達人!」

判治理事

 2030年度の国の温室効果ガス排出削減目標が13年度比26%減に決まった。達成にはガスや電力などあらゆるエネルギー消費を13%削減する必要がある。高効率設備の普及が主な施策となるが、省エネルギーセンターの判治洋一理事は「人が重要だ」と指摘する。現状の省エネの課題と目標達成に求められる取り組みを判治理事に聞いた。

―13%減は厳しい数字ですか。
 「石油ショックを振り返ると、13%減は過去に実績のある傾き(削減)だ。それに省エネが後退していると感じられる工場がある。省エネのできる人材が現場を去り、設備が古くなっている。厳しいという声を聞くが、達成できない数字ではない」

―省エネの余地がなくなった「乾いた雑巾」という声を産業界から聞かれます。
 「省エネルギー法にはエネルギー消費原単位を年1%改善する努力目標がある。ここ最近の産業部門は1%を達成できておらず、確かに乾いた雑巾かもしれない。だが、補助金を使って高効率設備が導入されているのに改善されていない現状もある」

―設備の問題ではないということですか。
 「省エネ診断をすると、設備があるべき姿で使われていない現場に出会う。ボイラーを替えても、工程に届ける途中で熱が失われている。空気圧縮機も同じで、途中でエア漏れがあれば効率は上がらない」

―どのような対策が求められますか。
 「箱モノ(設備)だけでなく、配管も含めたシステム全体をみるべきだ。人の問題もある。経験者の引退や人手不足で本来あるべき姿に戻せる人材がいなくなった」

―省エネルギーセンターは人材育成を支援しています。
 「『エネルギー診断プロフェッショナル』の認定制度を運用している。エネルギーの知識に加え、現場でチェックができる能力を持った人材を認定している。設備更新前に熱や空気の配管をチェックするなど、必要な技能が身につく。設備担当者が他の業務と掛け持ちをしているような中小企業にも役立つ制度ではないだろうか」

<記者の目>
 30年度の温室効果ガス削減目標で業務部門、家庭部門ともに40%減が求められた。産業部門は6%だが、エネルギー価格が上昇する状況でも国際競争にされされており、体質強化のために省エネの継続が必要だろう。判治理事が指摘する人材の問題が起きているなら、技能伝承を急ぐべきだ。
(聞き手=松木喬)
日刊工業新聞2015年09月09日 素材・ヘルスケア・環境面
松木喬
松木喬 Matsuki Takashi 編集局第二産業部 編集委員
ICTのおかげでいつ、どこで、どれだけエネルギーが使われたかが監視できるようになりました。「昔より省エネをやりやすくなった」というのが判治理事の見方です。にもかかわらず「後退」しているのであれば、指摘のように人材の問題でしょう。今後はビルの省エネが求められます。ビルの「省エネの達人」も育てる必要がありそうです。

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