「グランドセイコー」や「クレドール」も…高級腕時計を生み出す現場はどう進化する?

【連載】メードインジャパン 腕時計工場の最前線(1)

グランドセイコーなどを組み立てる工房(盛岡セイコー工業内)

**職人の“虎の穴”技術伝承  年末商戦に向けて、時計各社が相次いで新作の腕時計を発表している。スマートフォンやスマートウオッチの普及で苦戦が続く普及価格帯に対して、意匠性の高い高価格帯の販売は比較的好調だ。その製造を担う各社の主力拠点では、生産体制の最適化や人材育成に力を注いでいる。訪日外国人の増加など今後の需要増にも期待がかかる中、高級品を生み出す時計工場の最前線を追う。初回は盛岡セイコー工業(岩手県雫石町)。(3回連載)  盛岡セイコー工業は機械式の「グランドセイコー」や「クレドール」の生産、アナログクオーツのムーブメント(駆動装置)の製造を手がける。高級時計について、林義明社長は「生産はこの3、4年で倍々ゲーム的に伸びている」と語る。  好調の裏側で、直近の課題は良品率の向上だ。セイコーブランドの“顔”とも言えるグランドセイコーは、専用の工房内で限られた数の職人が組み立てる。業界標準よりも厳しい独自の検査項目を設けており、部品加工から合格までに4カ月近くかかることもあるという。  検査不合格品の発生を減らすことで歩留まりを高めたいが、職人の技術向上のみでは補いきれない。そこで、使用する部品の精度の向上に力を注いでいる。がんぎ車などの製造では半導体などの精密部品を製造する手法「MEMS」を採用。部品の強度が増しただけでなく、軽量化にもつながった。  製造設備への投資も検討している。部品の中には年季の入った機械と職人技で生産されているものもあり、更新することでより一層の効率化を図る。  同社のこれまでの設備投資では、自動化の設備を導入しやすいアナログクオーツが多かったという。ファッションウオッチなどの市場縮小を背景に、高価格帯の生産環境の整備に力を注ぐ方針に切り替える。アナログクオーツの生産体制は「長年継ぎはぎのように自動化や改良を重ねてきた」(林社長)ことから、これ以上の設備導入が難しい事情もあるという。  機械や技術の向上が進むとはいえ、職人の技が高価格帯の生産の重要部分を担うことに変わりはない。熟練の技能者を中心に、技術の伝承にも力を注ぐ。  工場内には育成のための養成所も設置。マイスターを目指す若手が日々研さんを積んでいる。林社長は「時計職人の“虎の穴”だ」と語る。養成所では技能五輪全国大会に向けた活動が中心。最近では18年に金賞の受賞者を輩出した。 【1】盛岡セイコー工業(10月21日公開) 【2】シチズン時計マニュファクチャリング・飯田殿岡工場(10月22日公開) 【3】山形カシオ(10月23日公開)

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