想い出はいつもキレイだけど、脳と記憶には何が起きている?

おすすめ本の本文抜粋「おもしろサイエンス もの忘れと記憶の科学」

 なんで、想い出はみな美しいのだろう。  ヒトは、成功したことの記憶や、良いことがあった記憶だけを残そうとします。失敗したことや、思い出したくない記憶をできるだけ取り除きたいという心理が働くためです。また、新しく記憶すべきことを入力するときや、思い出した記憶を再び記憶として入力するときに、私たちは記憶として残しておきたい記憶を美化し、記憶として保持しようと編集します。そのため想い出の記憶はみな美しいものとなるわけです。  一方、私たちの脳や体は時の経過とともに変化しますが、保持している記憶も同様に変化していきます。  ①記憶は、気づかないうちに、時の経過とともに、内容が変わってしまう  ②記憶は、断片だけでなく、物語化され、編集されて記憶される  このように、私たちの記憶は時の経過とともに変化し、再入力時の編集により、いつの間にか変化しているのです。  記憶は、ニューロンやシナプスなどに保持されているので、言い換えると、脳全体で記憶が保持されています。しかし、その記憶は、10年後には異なってしまいます。時の経過とともに、脳や体全体が変わってしまうことや、また、関連する新たな記憶によって上書きされるからです。  ヒトの体は10年経過すると様々に変化しますが、脳も変化します。変化した脳に合わせて記憶も保持されるのです。また、変わっていく脳に合わない記憶は消去されてしまいます。それは記憶が改竄(かいざん)されるということではなく、本人が気づかないうちに、記憶の内容が変化してしまうのです。  私たちは、時間の経過とともに、嫌なことや、不必要な記憶をいつまでも覚えていたいとは思わず、記憶から消去したいと考えます。記憶を想い出して、記憶に残したくないことは消去し、残しておきたい記憶を新たな記憶として保持します。そのため想い出した以前の記憶とは、まったく変わってしまうのです。  すなわち、脳や体が変わるときに、記憶も美しく変わり、さらに、新しく記憶されるときに、変容したり、再構成されて、想い出となる美しい記憶として残るようになります。  私たちは、記憶をする時に、そのでき事だけや、その刺激だけで保存しようとすると忘れやすいために、できるだけ関連することと共に記憶しようとします。  学習などで記憶しようとするときに、様々な工夫をして記憶することはよく見られますが、それらは記憶を編集するということです。  記憶を編集する上で、覚えやすく、また容易に記憶を再生させるためには、ストーリー性をもたせることが最も効果的です。物語化すると、記憶として覚えやすく、その物語に関連する機会や、連想することも増え、思い出す頻度も高くなります。思い出す頻度が高くなるほど、記憶は長く残る可能性が高くなります。 一口メモ 記憶はいつのまにか物語化され、編集され 、時の経過とともに内容が変わる。 書籍紹介 書名:おもしろサイエンス もの忘れと記憶の科学 著者名:五日市哲雄 著、田中冨久子 監修 判型:A5判 総頁数:144頁 税込み価格:1600円(税抜き) 一度憶えたら忘れない運動の記憶、美しく書き換えられる想い出、必死に努力して憶えた知識など、人の記憶の仕組みと、その逆のなぜ人はもの忘れをするのかを中心に、脳の情報の伝達手段、記憶障害と記憶喪失などを解説していく。 著者紹介 五日市哲雄(いつかいち てつお) 1947年、北海道函館市生まれ。北海道立函館工業高校工芸科卒、専修大学法学部卒業。大学卒業後文科省関係、化学メーカーに勤務後、広告業界でディレクター、大手総合出版社の編集者、医学雑誌の編集長を経て、サイエンスライターとして、「医療ミス・医療事故対処法」「体の謎がわかる本」「快眠と不眠メカニズム」「最強の血統学」などを執筆。近年は、「おもしろサイエンス」シリーズから『磁力の科学』『枕と寝具の科学』『大豆の科学』(いずれも日刊工業新聞社)を執筆。 田中冨久子(たなか ふくこ) 1964年横浜市立大学医学部卒業、1985年横浜市立大学医学部教授。2004年同大学医学部長を歴任して、2005年同大学定年退職。2011年田中クリニック横浜公園開業(院長)。2017年瑞宝中綬章受章。専門は、生理学、神経内分泌学、脳科学。日本神経科学学会、日本生理学会、日本神経内分泌学会、日本生殖内分泌学会の会員。ブレインサイエンス振興財団常務理事。主な著書は『女の脳・男の脳』『女の老い・男の老い』(NHKブックス)、『脳の進化学』(中公新書ラクレ)、『はじめての生理学 上・下』(講談社ブルーバックス)。学会活動は、貴邑冨久子として行っている。 販売サイトへ 目次抜粋 第1章 記憶のメカニズムは謎に満ちている ヒトの脳は、どのようにでき事を覚えるのだろうか 心を創るメカニズムとは? 第2章 もの忘れと忘れる記憶の違いとは? ど忘れは、なぜ起きる 恋は、記憶力を増す? 第3章 今と未来の行動につながる過去の記憶 なんで、想い出はみな美しいのだろう 子ども時代の記憶ほど忘れない! 第4章 体で覚えた記憶は忘れない 技能や運動のための記憶とは? 条件反射は、なぜ、体の記憶と呼ばれるの? 第5章 言語の記憶は不思議がいっぱい ヒトだけが持つ不思議な言語野 日本人は、記憶が得意? 第6章 記憶を操作する 心の状態に左右される記憶の想起 記憶力増強には、睡眠が一番! 第7章 ある日突然起こる記憶障害とゆっくり進行する記憶障害 ある日突然起こる記憶障害 65歳から発症する記憶障害 第8章 AIは記憶をどのように進化させるのだろう AIとは何か?マシンの記憶とは何か? 子どもの声から、不安やうつ病を予知するAI ↓画像をクリックしてamazonへ↓

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