「全従業員13万人の思考プロセスをひっくり返す」(富士通社長)

時田隆仁社長インタビュー

時田隆仁社長

 「IT企業からデジタル変革(DX)企業へ」を旗印に富士通の新体制が始動した。けん引役となるデジタル変革(DX)の新会社を2020年1月に設立。併せて、職務と役割に伴う市場価値で報酬を設定する「ジョブ型人事制度」の導入などの新施策の効果も注目される。「全従業員13万人の思考プロセスをひっくり返す」と熱弁を振るう時田隆仁社長に今後の展開を聞いた。  ―新会社設立の背景を教えて下さい。  「ユーザーの要望に対して当社の製品・サービスがマッチしなければ他社から調達する。そこをより際立たせるのが狙いだ。自前主義はとうに終わっていて、ユーザーの要望もそこにはない。従来のグループ会社とは価値観を変え、自立できる会社を目指す」  ―DXという視点で、中堅企業にはどう向き合うのですか。  「大手企業は自らディスラプション(破壊)する力がある。一方でDX時代に向けて、一番困っているのは地域や中堅の顧客。国内でまだリーチ(働きかけ)ができていない分野はたくさんあり、そこは当然、視野に入っている」  ―第5世代通信(5G)をめぐっては、地域限定で利用するローカル(自営)5Gなども注目されます。  「通信事業者向けのビジネスに閉じこもることなく、スマートファクトリーや医療などあらゆる分野でリーチできる体制を作りたい。当社の全国事業所や工場をローカル5Gのショーケースとして社内実践もしたい」  ―具体的には。  「スマートファクトリーならば工場のあり方から語らなければならない。従来は自社製品があり、その上にアプリケーション(応用ソフト)などを乗せる“足し算方式”だった。そうではなく、思考プロセスの逆転が必要だ。顧客にとっての価値を第一として、サービスや研究開発を考えていく。全社には『プロセスの順序をひっくり返せ』と号令を掛けている」  ―次期スーパーコンピューターの進捗(しんちょく)は。  「求められるのはコンピューティングパワーだが、重要なのはどういう価値を届けるかだ。そこに落とし込まずに、多大な開発費を投じてはもたない。今までは学術・研究向けが中心だったが、次期スパコンは敷居を下げたい。そのための商用機を11月に投入する」 【記者の目/思考プロセスひっくり返せ】 DXの神髄は顧客視点でビジネスを変えること。富士通はこれに正面から向き合うため、DXの新会社を設立する。富士通本体と一線を画すことで新たな攻め口を生み出す考えだが、グループ会社としての距離感が難しい。全社の思考プロセスをひっくり返すという心意気に期待したい。(編集委員・斉藤実)

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