「伝統と革新」が交差する京都、企業を吸引する力

外資系スタートアップも支援

日刊工業新聞2019年9月13日  外資系スタートアップ支援企業が関西で活動を本格化している。コーポレートベンチャーキャピタル(CVC)の米ペガサス・テック・ベンチャーズは投資賞金1億円のスタートアップ向けピッチイベントの予選会を2020年2月に初めて大阪市で開く。アクセラレーターの米プラグアンドプレイは京都市に拠点を設置したほか、シェアオフィスの米ウィーワークは11月に神戸市に新拠点を開く。  ペガサスは20年5月に米国で開催する第4回の「スタートアップワールドカップ」の日本予選として、東京と九州に加え、新たに大阪市で予選会を開く。「大阪市から熱心な誘いがあった」(アニス・ウッザマン最高経営責任者=CEO)とし、同市と連携してイベントを盛り上げる。会場は大阪ナレッジシアター(大阪市北区)を予定。第4回の「スタートアップワールドカップ」には東京と大阪で選出の各スタートアップが出場できる。  20年の同イベントの決勝戦に向けては、約50カ国・地域の3万―4万社のスタートアップから地域予選への参加申し込みがある見通しという。同社はこうした企業のデータから「優れたスタートアップの発掘につなげる」(ウッザマンCEO)。  プラグアンドプレイは、電通が7月に開設した京都・四条烏丸のイノベーション支援拠点「engawaKYOTO」に、東京に次ぐオフィスを設置した。日本法人のフィリップ・ヴィンセント社長は関西に拠点を設けた理由について「京大をはじめ、優秀な学生が多い。起業のポテンシャルが高い」と語る。ハードテック(モノづくり技術)やヘルスケアをテーマに、事業計画の策定や資金調達の手法などを起業家に教える3カ月間のプログラムを提供する。  ウィーワークは11月に、日本で6カ所目となるオフィスを三宮プラザイースト(神戸市中央区)に開設する。3フロアに約700デスクを提供する予定だ。神戸市は外資系企業の参入やスタートアップの多さに加え、科学技術面での研究開発が盛んなことから進出を決めたという。  神戸市とともにビジネス支援プログラムも提供。ウィーワークの割引と同市の補助金により、支援対象となった企業は最大55%優遇された価格で入居できるとしている。 (取材=大城麻木乃)  京都市は11月11日14時から東京都千代田区のAP東京丸の内で「京都市企業誘致セミナーin東京」を開く。京都市長の門川大作市長による市の紹介や、新たに進出した企業から京都市のビジネス環境の魅力、京都大学から産学連携の取組、京都リサーチパークおよびジェトロ京都から進出支援のPRを行う。参加無料で定員100人。事前登録制。問い合わせは京都市産業観光局新産業振興室(075・222・3324)へ。 【開催概要】 名称:京都市企業誘致セミナーin東京 日時:11月11日(月)14:00~16:00 会場:AP東京丸の内(JR各線東京駅、大手町駅から徒歩4分) 主催:京都市 対象:首都圏企業、外資系企業、大使館、在日外国商工会議所等 定員等:100名 ※無料 【プログラム】 14:00 [挨 拶] 京都市長 門川大作 氏 14:15 [講演1] Plug and Play Japan(株) 執行役員COO 内木遼 氏 14:35 [講演2] (株)マネーフォワード 取締役執行役員CTO 中出匠哉 氏 14:55 [講演3] 京都大学 産学連携本部 副本部長 木村俊作 氏 15:10 [講演4] 京都リサーチパーク(株) 代表取締役社長 小川信也 氏 15:25 [講演5] ジェトロ京都貿易センター所長 牧野直史 氏 2015年11月11日ニュースイッチオリジナル  伝統の街・京都で伝統産業に新しい風を吹き込もうと若き女性起業家が動きだした。 「和える」代表の矢島里佳(27)。「0から6歳の伝統ブランドaeru」を立ち上げ、数多くのメディアにも取り上げられる彼女が、7日に京都・五条に2つの目の直営店「aeru gojo」をオープンさせた。なぜ京都なのか?そこには今の資本主義経済から脱皮を目指す矢島と京都の共通した思いがある。  2011年に「和える」を起業した矢島。会社を立ち上げた時から、東京と京都という二つの街に日本の伝統を発信する場所を作りたいと思っていた。昨年7月に東京・目黒に直営1号店を構え、それからわずか1年ちょっとで京都進出を果たす。  オープン前日。「aeru gojo」で矢島と京都市長の門川大作、京都信用金庫専務理事の榊田隆之が膝詰めで語り合った。テーマは「京都とaeru gojoがめざす未来」。  門川は「京都市の生き方と『和える』の基本コンセプトが合致している。それは過度な競争主義とは別の価値観だ」という。15年前、京都市は基本構想を策定した。普通、自治体であれば産業政策やインフラ整備などを掲げる。  しかし京都市は「生き方」を真っ先に定義した。生き方とは昔から市民が得意としてきたもの。「目利き」「極める」「おもてなし」「もったいない」などの精神だ。榊田は「一見さんお断りなどの嫌らしい文化もひょっとしたら守る必要があるかもしれない」と話す。  東京出身の矢島が京都に通い始めて2年になる。「最初は伝統の街という単純なイメージだったが、実は古くて新しいが続いている革新の街だということを肌で感じた」。門川は伝統と革新について、比叡山延暦寺の「不滅の法灯」を例に出す。  「新しい油を注ぐことで伝統が続く。矢島さんが新しい油を注ぎにやってきた。もともと京都はよそから入ってきた人が街を発展させていった。和えるもいずれ老舗になっていくだろう」(門川)。榊田も「矢島さんのような人を京都が応援していかないと、この国のモノづくりはおかしくなる」と続けた。  矢島は日本が「失われた20年」の時代に子どもから大人になった世代。「私たちは先人たちが築いてくれた豊かな国に生まれた。経済は大事なんです。もし食うや食わずの暮らしなら、食器は何でもいいとなる。経済が発展しているからこそ、私は文化を考えることができた」という。  矢島が最近よく使う言葉が「文化経済大国」。文化は贅沢ではなく日常にあるもので、文化があるからこそ経済ができている、という考えだ。彼女が自身に課すミッションは文化資本と経済資本を“和える”こと。  門川は「モノづくりを和えるから、文化を和える存在になってほしい」と期待を込める。今、京都はインバウンド効果で外国人観光客であふれかえっている。しかし「コンビニで唐揚げを買って舞妓さんを待っていたりする。外国の人たちと街が交わっていない」(門川)のだ。  他の産業、異分野の人たちと和えられていないのは、京都に数多くいる伝統産業の手職人も同じ。矢島は全国を回りながら「伝統産業の衰退のスピードに自分がやろうとしていることが追いついていない」と危機感を募らす。  矢島が「aeru gojo」を構えた松原通りは、かつて呉服商などが集積し賑わっていた。しかし時代とともに町屋がビルに建て替えられ、風景は様変わりしつつある。「aeru gojo」が入居した町屋のオーナーは糸の卸や小売りを手がける「糸六」。年々、事業が縮小傾向にある中で、代表取締役の今井登美子は店舗の一部を貸す出すことを考えていた。ただ飲食業などには店子になってほしくなかった。縁あって矢島を紹介され、すぐに承諾する。  町屋は前が「aeru gojo」、奥に入ると糸六がそのまま商売をしているという佇まい。これを機にコラボ商品も販売し、まさに“和える”を体現している。今井は「私たち自身も新しいことにチャレンジする気持ちになれる」とワクワク感が止まらない。  京都は第2,第3の矢島のような存在を吸引しなければいけない。そして矢島は伝統産業の衰退を少しでも食い止めるべく、次のアイデア実現に進み始めている。 (敬称略) ※内容は肩書きは公開当時のもの

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