中国ロボコン、シミュレーターと試験フィールド提供で技術者育てる

【連載】中国ロボコンの巨大エコシステム #5

DJI社内のテストフィールド

 ロボットコンテストで勝ち抜くには機体の開発とゲームの戦略立案を並行して進めることが大切だ。どんな戦術が有効か、その戦術を実現するにはどの程度の機体性能が必要か検証する。(取材・小寺貴之)  DJIは同社が主催するロボコン「ロボマスター」向けにロボットシミュレーターを提供する。完成度は高くゲーム大会を開けば子どもが熱中するほどだ。シミュレーターで戦術を検証して自動制御のソフトウエアを開発するなど、遠方にいるチームメンバーをつなぐ役割も担う。  「(ロボマスター向けのロボットシミュレーターは)完成度が高すぎて普通の家庭用パソコンで動かない。これでは販促に使えない」と、DJIジャパン(東京都港区)の販売担当者は嘆く。子どもに手軽にシミュレーターで遊ばせて親に機体購入を訴求しようと考えたが断念した。シミュレーターの性能にこだわったため、画像処理半導体(GPU)を積んだゲーム用パソコンが必要になった。  シミュレーターの描画能力は、ロボットの画像認識などの機能を検証するためには重要だ。シミュレーターがしっかりしていれば、自動制御や画像認識などのソフトウエアの開発に利用できる。ロボマスターでは対戦で基地を守る哨(しょう)兵ロボは完全自動が求められ人間は操縦できない。ロボが単独で敵機を検出して攻撃し、体力が減れば回避行動をとる。特に哨兵ロボが撃破されると基地のバリアーが解除され、基地に直接攻撃できるルールだ。哨兵ロボは守りの要であると同時に格好の的になった。  実機や会場での調整は必ず要る。だが複数の制御プログラムを用意したり、遠くに住むメンバーと開発を分担したりするためにシミュレーターは有用だ。ロボットオペレーターの練習もでき、連係プレーを磨く場になる。日本チームを支援してきたニワカソフト(福岡市中央区)の古賀聡社長は「やる気のある人がいても、一堂に会するのはなかなか難しかった」と振り返る。  ロボマスターでは参加チームが開発技術をオープンソース化すると優れた技術には賞金が出る。オープンソースとシミュレーターは新規参入のハードルを下げる。2019年大会で優勝した東北大学の王法其リーダーは「来年も勝てる保証はない。賞金で部室に空調を入れて体制を強化する」と気を引き締める。  さらにDJIは社内に約15×28メートルの実寸大のテストフィールドを抱えている。ここでフィールドの起伏やルールの微調整を行う。テストフィールドの周囲には試作した弾倉やテスト用の機体が並ぶ。それらを作る工作室も併設する。  DJIの技術者が機体を作ってオープンソースを検証し、各チームが導入できるようサポートする。フィールドの起伏はロボットの視界や死角配置が適正か、ルール修正は試合がエンターテインメントとして面白くなるか、実際に試して検証する。各大学へのサポートを含めて100人の技術者がロボマスターを支える。この5年間の投資額は3億元(約45億円)。技術者の卵たちを最高の舞台に上げるために必要な投資だ。(全6回)

続きを読む

関連する記事はこちら

特集