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「三菱スペースジェット」量産エンジン、年内出荷へ

三菱重工航空エンジン・島内克幸社長インタビュー
「三菱スペースジェット」量産エンジン、年内出荷へ

米国で試験飛行中の「スペースジェットM90」

 ―事業規模は2019年に1000億円を突破。40年には3000億円を視野に入れますが、成長軌道をどう描きますか。
 「最重要課題は設備や人員の増強だ。当面は(三菱重工業)グループのリソースを有効活用した部品の増産対応や、航空機エンジンの修理・整備(MRO)事業の拡充に取り組む。参画済みのエンジンプロジェクトだけでも2500億円規模は見えている。その先は将来機エンジンへの参入が必須。設計・開発段階からプログラムに参画できるよう、エンジンメーカーとの協業を深めていく」

 ―欧エアバスの主力小型機「A320ネオ」に搭載する「PW1100G―JM」向けの部品製造がピークを迎えています。増産対応の状況は。
 「20年に三菱重工の長崎造船所(長崎市)の敷地内で、エンジン部品の工場を建設する。新工場では自動搬送システムなど自動化・省人化技術を活用し、世界最高レベルの生産性を追求する。機体搭載用についてはピーク(約700―800台)に対応できる体制を確保している。今後はスペアエンジンの需要を見極め、その数量をさばけるよう準備を進める」

 ―MRO事業の戦略は。
 「既存の『PW4000』『V2500』エンジンに加え、PW1100G―JMのMROを21年度に始める。整備能力を順次増やし同エンジンでは最終的に月10台を目指す。既存エンジンと合わせ、月15台の体制にする。このため、小牧本工場(愛知県小牧市)内にあるMRO工場を今後1年かけて拡張するほか、三菱重工の他部門から人的リソースを融通してもらうなど人員を増やす」

 ―三菱重工グループが開発している国産小型ジェット旅客機「三菱スペースジェット(MSJ)」向けエンジンの状況は。
 「MSJに搭載する『PW1200G』エンジンは初号機の完成後、エンジン運転などを実施し、当社の組み立ての健全性を(開発主体である)米プラット・アンド・ホイットニー(P&W)と確認した。現在は飛行試験用のスペアエンジンを組み立てており、秋ごろに出荷予定。初号機向け量産エンジンは、年内出荷を目指している。同エンジンのMROも、当社で取り組む前提でP&Wと協議中だ」

【記者の目】
 航空機エンジンは今後20年間で約130兆円(約8万3000基)の需要が見込まれる成長市場だ。同社も3―5年は確定受注残で埋まっており、堅調そのもの。今後の課題はMRO事業の拡大や将来プログラムへの参画だ。将来プログラムは数十年後の収益力を占う試金石となる。エンジンメーカーとの協業をいかに進めるかが、分水嶺(ぶんすいれい)となりそうだ。
(名古屋・長塚崇寛)
島内克幸氏


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日刊工業新聞2019年9月26日

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