豪雨被害を抑制する「マンホールアンテナ」の仕組み

日之出水道機器などが開発

「マンホールアンテナ」の表面(左)と裏面(日之出水道機器提供)

 日之出水道機器(福岡市博多区、浅井武社長、092・476・0777)が、マンホールふたに機能を持たせることで減災に役立てようとしている。突発的な豪雨や台風など、水にまつわる災害が各地で急増している昨今。地下の状況は地上にいる限り把握が難しい。下水管路を流れる水の「見える化」により、早い段階での避難につながる情報を発信し人的被害の低減に効果を発揮している。  明電舎や東京都下水道サービス(東京都千代田区)と共同開発した「マンホールアンテナ」は、マンホールふた内部に無線通信用アンテナとバッテリーを搭載している。センサーが測定した下水管路の水位をリアルタイムで把握する。通信機能の搭載によって遠隔操作で10秒―24時間まで測定周期を設定可能なため、時刻や状況に応じてスマートフォンやタブレット端末などを使って監視できる。  道路上に設置されることが多いマンホールふたは、耐久性や耐水性、耐荷重性など「強度を保つこと」(外山崇史マーケティングチームマネージャー)を絶対条件として求められる。そのため一般的な製品では、ふたの厚みが通信の遮断要因となる。そこでマンホールアンテナは通信機器を搭載するために、ふたの表裏双方に工夫を施すことで解決した。  耐荷重性が求められる表面部分は、素材の一部にポリカーボネートを用いることで強度を保ちつつ通信可能にした。裏面はマンホールを通じて下水管路とつながるため高温多湿の環境になる。水が大敵の通信機器を搭載するには、密閉性をいかに高めるかが開発のハードルを上げた。  マンホールふたは経年により減肉する(厚みが減る)特質を持つ。そうした隙間ができやすい特性にも対応するため、機器裏面のステンレス材とふた本体をガスケットで密着。その上でパッキンで2重に覆い、時間経過による気密性の低下を防いで通信機器が継続的に機能する状況を作り出した。  開発の背景には、豪雨被害が各地で相次ぐ中、都市部での排水機能の低下による下水管路への流入量の増加傾向がある。許容範囲を超える水が流入して地上へ噴出するだけでなく、時には水圧でふたが飛散したり、舗装が破損したりするリスクもある。水そのものによる被害にとどまらず、2次被害によって生命に危険を及ぼす可能性を減らす上でも、定点観測できる環境作りが求められていた。  マンホールアンテナは製品化で別の可能性も広げている。水位や流量だけでなく、臭気の原因となる硫化水素ガスや電気伝導度も測定できる。水害対策以外に、日常の下水管路の状況を把握するストックマネジメントでも持ち味を発揮する。  マンホールふたは公共物ゆえに高い性能が求められる一方、都市空間との一体化も問われる。「邪魔者となるふたの特性をうまく利用する」(外山マネージャー)ことで付加価値をつけて、街の安全・安心を長い年月をかけて守り続けていく。(文=西部・高田圭介)

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