新品と同じ品質の再生プラスチックを!化学業界が技術開発急ぐ

「ケミカルリサイクル」量産化を視野に

スチームクラッカーの前プラスチックを手にするケミカルリサイクルの担当者ら(BASF)

 廃プラスチックを油やガスに変換し、新品と同等品質の再生プラを生産できる「ケミカルリサイクル」技術の実用化が近づいてきた。複数種類のプラを混在したまま処理でき、リサイクル比率を大幅に高められると期待されている。自動車メーカーらが同技術で再生されたプラを使い、量産化を視野に入れた部品を試作するまで取り組みが進展してきた。  家電リサイクルに採用され、実用化で先行するのは「マテリアルリサイクル」技術だが、一般ゴミなどへ利用を広げるには課題がある。  プラを溶かして固める手法のため、プラを種類ごとに分別しなければいけない。だが、身の回りにはポリエチレンやポリプロピレン、ポリスチレンなどさまざまなプラがあり、見分けがつきにくい。食品の日持ちを良くするため複数のプラを積層した食品包装フィルムに至っては、分別不可能だ。  また同技術で再生したプラは石油由来の新品と同等品質を実現することが難しい。品質の劣った再生プラは用途が限られるため、同技術だけではリサイクル拡大に限界がある。  そこで独BASFや米ダウ、三井化学、昭和電工、宇部興産など多くの化学メーカーは、ケミカルリサイクル技術の開発を急いでいる。米ダウは8月29日、廃プラから熱分解油を生産する技術を持つFuenix Ecogyグループ(オランダ)とパートナーシップ契約を結んだ。熱分解油はナフサと同様に既存の石化プラントで原料に使えて、多様なプラを生産できる。  Fuenixの技術は、廃プラ1キログラムから7割にあたる700グラムを新品のプラを生産でき、石油由来のプラ生産に比べ二酸化炭素(CO2)排出量を5割削減できるという。ダウは同社から熱分解油の供給を受け、オランダ・テルヌーゼンの生産設備でプラスチックを生産する計画だ。  廃プラ由来の熱分解油からのプラ生産では、独BASFが先行している。同社は熱分解油を生産する独Recenso(レセンソ)と連携。2018年10月に初めて、ドイツ・ルートヴィッヒスハーフェンにある拠点の生産設備に原料として熱分解油を投入した。  7月には、BASFのパートナー企業4社が熱分解油由来プラを使った試作品をドイツでお披露目した。英ジャガー・ランドローバーは同社初の電気自動車タイプのスポーツ多目的車向けにポリアミド樹脂製部品を試作。他の3社は発泡スチロール製包装資材や、バリアー性の高い食品包装フィルム、回路遮断器を製作し、多様な製品に対応できている。  日本では三井化学が自動車業界と連携し、外装部品から熱分解油を生産し、ポリプロピレンなどを生産する技術開発を進める。宇部興産や昭和電工は、廃プラから生産した合成ガスを使ったケミカルリサイクルの推進に向け、日揮や荏原環境プラント(東京都大田区)と協業の検討を始めた。4社は年内をめどに荏原と宇部が開発した技術のライセンス契約を結び、同技術を活用した廃プラのガス化処理設備の営業活動を展開する。  昭和電工は03年から、年7万トンの廃プラをガス化できる設備を川崎事業所(川崎市川崎区)で稼働させている。世界で唯一、長期商業運転実績のあるガス化ケミカルリサイクル設備だ。  同社は廃プラから水素と一酸化炭素などの合成ガスをつくり、さらに化学反応させてアンモニアやドライアイスを生産している。日本では毎年、夏場のドライアイス不足が問題となっているが、同技術で解決できるかもしれない。  米マッキンゼー・アンド・カンパニーは18年12月のリポートで、熱回収を除く廃プラのリサイクル比率が現在の16%から30年には50%に拡大するシナリオを公表した。一部は工程中にエネルギーとして損失するが、マテリアルリサイクルは12%から22%、ケミカルリサイクルは技術進展によって1%から17%に高まると見込む。  化学メーカーにとって、化学反応が必要なケミカルリサイクルは新たな収益源になり得る点でも重要だ。地球環境問題の解決と新ビジネスの一石二鳥にできるか。今後の技術革新にかかっている。 (取材・梶原洵子) <関連記事>

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