介護訓練や障がいのケアにVRが有効なこれだけの理由

ジョリーグッドがサービス提供

認知症患者の視点を体験できる「ケアブル」

 介護や医療の分野でVR(仮想現実)の活用が進んでいる。ジョリーグッド(東京都中央区、上路健介社長、03・4455・2694)は、VRによる介護研修サービス「ケアブル」や発達障がい支援機関向けサービス「emou(エモウ)」を提供している。介護のトレーニングや障がいのケアにVRがなぜ有効なのか、今後はどのような分野で活用が見込まれるかを探った。(文=森下晃行)  「座学や研修で対応を学んでいても実際に介護する相手を前にすると緊張してしまう。だから主観的な疑似体験ができる『ケアブル』が役に立つ」と、ジョリーグッドのクリエイティブ事業部の窪田英司ビジネスプロデューサーは話す。ケアブルは介護施設向けのトレーニング用VR。介護職員と被介護者、両者の視点を体験できるのが特徴だ。  認知症患者を介護するとき問題になるのがコミュニケーションの難しさだ。介護職員の立場では話がかみ合わずいらいらしたり、言うことを聞いてくれないために高圧的な態度を取ってしまったりする場合もある。そこでケアブルでは“介護される側”を体験できるVRを用意した。  例えば、介護現場でよくある「入浴拒否」の事例。介護職員が視線を合わせず、一方的に入浴を促す状況を認知症患者の視点から再現した。「認知症の人からはこう見えているのかもしれない」と感じることで、自分の行動を振り返るきっかけになると窪田ビジネスプロデューサーは説明する。  VRが従来の映像コンテンツと違う点は、場の雰囲気などの微妙なニュアンスを取り入れたコンテンツを体験できる点だという。映像を見ることで自分も当事者であるかのように感じられるため「見た人の感情を動かしやすいメディアとして今後発達するかもしれない」と指摘する。  「エモウ」は発達障がいの支援機関である放課後デイサービスや学校向けのコンテンツだ。相手の気持ちがくみ取れない、相手の言動を正しく理解できないなど発達障がい者は対人関係が苦手な場合が多い。そこでエモウは学校や職場で人を相手にするさまざまな場面をVRで再現した。社会生活や対人関係で必要なスキルを訓練する「ソーシャルスキル・トレーニング」で活用する。  エモウの開発責任者であるクリエイティブ事業部の青木雄志シニアプロデューサーは「イラストやロールプレイではどうしてもリアリティーを感じにくい。エモウは実際に職場や学校にいるかのような臨場感がある」と話す。例えば就労支援のコンテンツでは面接を体験でき「失敗を気負わず繰り返し練習できる」という。  VRはトレーニング分野で特に有用だ。時間や場所に関係なく反復学習できるため、通常より早く技能を習得できる。特に医療従事者のトレーニングなどで有用だという。さらに、見た人の主体性や能動性を引き出しやすい。エモウを見たことで施設利用者がスタッフによく話しかけるようになった事例があるため「コミュニケーションツールの側面もある」(青木シニアプロデューサー)。  VRの肝は自分もその場にいるかのような臨場感だ。人と人の関わりを再現する強みを生かし、さまざまな分野での活用に期待が膨らむ 。

続きを読む

関連する記事はこちら

特集