「韓国人は正義を立証した方が勝ちになる。そういう国だと考えるしかない」

韓国情勢に精通する深川早大教授に聞く、日韓対立の行方

昨年5月の日韓首脳会談(首相官邸公式ページより)

 経済産業省は28日0時に、貿易管理上の優遇区分「グループA」から韓国を除外し一つ下の「グループB」に引き下げた。軍事転用が可能な品目の不正輸出を防ぐ安全保障上の措置で、韓国向けの輸出手続きが厳格化した。韓国政府の反発は避けられず、日本への報復措置が強まる恐れがある。韓国情勢に精通する早稲田大学政治経済学術院の深川由起子教授に日韓対立の解決策などを聞いた。  ―今後の展開をどう見ていますか。  「軍事情報包括保護協定(GSOMIA)の有効期限切れの前に、天皇陛下の即位の礼がある(有効期限は11月22日、90日前の8月24日は更新期限)。韓国は体面が重視される社会なので、全世界の首脳が参列する中、韓国だけ派遣できないのはまずいことになる。これは韓国にとって日本人が考えている以上に大事なことだ。それまでに落としどころを探りたいという切迫感はあるようだ」  ―両国が歩み寄るための方策は。  「一つは互いに多様性を認めることだ。韓国にも反日イコール愛国者という考えはおかしいんじゃないか、と考える人はたくさんいる。政治家が自分の意見を国民に押し付けてはいけない。もう一つはルール・オブ・ロー(法の支配)の基準が違うことを認識すべきだ。日本人の基準は一度決めたものは変えないということだが、韓国人は正義を立証した方が勝ちになる。日本人には理解できないが、そういう国だと考えるしかない」  ―日本の貿易管理の運用見直しに対し、韓国は徴用工問題の対抗措置と受け止めて反発を強めています。  「徴用工問題は国と国との約束事であり、従軍慰安婦などとは次元が違う。韓国の主張を受け入れたら、東南アジアや中国にも韓国と同じ水準で補償するのか、という問題になる。日本としては(徴用工では譲れないという)レッドラインを示そうとした。それを示すために、実害がなく、韓国に再考を促すようなカードを選択したのだろう」  ―韓国政府は日本の真意を理解していないのでは。  「韓国は信用で成り立っている社会ではない。その代わり政治報復だけは、すごく理解する国だ。日本は信用崩壊というメッセージを出したつもりだが、韓国は政治報復の方が分かりやすいから、その理解に基づく妄想が広がった。日本は信用が崩壊したという深刻さが伝わらないのでストレスがたまり、韓国は報復だと思ってプライドが傷付いている」  ―米国が仲介する可能性は。  「日韓軍事情報包括保護協定(GSOMIA)を破棄したことで米国の仲介はなくなった。そもそもトランプ米大統領にはオバマ前大統領が持っていた人権の価値観はない」  ―韓国が望む将来像は。  「文在寅大統領は北朝鮮のみと適切に対応すれば、すべてが解決し、日本を追い抜けると考えている。だが北朝鮮と、どう実現するのか(という具体案)はない。政権が進歩系でも保守系でも(対日政策に)変わりはなく、反日カードを出せば政治が動くという発想は同じだ」  ―日本はどう対処すれば良いですか。  「日本も今はロジカルに考えることができていない。米中の間で“新冷戦”が起きる中、仮に韓国が中国の陣営に入ったら、それは日本の国益なのかという問題がある。新しい枠組みで日韓関係を考えないといけない」 【記者の目】  日韓関係は最悪の事態に陥ったが、両国民が一方的な意見に支配されるのは危険だ。深川教授は意見の多様性と、法規範の基準が異なることを認め合うことが重要だと説いた。まずは互いに相手の立場や価値観を理解し、双方の利害のために協力することから始めるべきだ。呉越同舟のような関係が発展すれば、いずれ欧州のような相互協力の関係に成熟する道も開ける。 (敷田寛明)

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