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新研究分野の開拓へ、文科省が始める新事業の中身

新規30億円要求
 文部科学省は2020年度に、新分野開拓の研究力強化を大学の改革で後押しする新事業を始める。挑戦的な研究を1教員につき年間数千万円で100人程度を支援すると同時に、教員の学内業務免除や研究機器の融通を図る大学に整備費を出す。期間は10年間。20年度予算概算要求で30億円を計上する。

 日本が苦手な新興・融合分野の開拓は研究力強化に必須だ。これまで単独の研究事業しかなかった。今回の「創発的研究支援事業」は、他研究室で余力のある機器・装置の活用を促すなど大学側の工夫を盛り込み、セットで提案を求める。

 教員人件費を研究費から拠出し、国立大学の運営費交付金を別の若手採用などに回す工夫もできる。研究費から事務や資料整理の人件費を出し、教員の研究専念につなげることも可能。これらは“時間を買う”新手法で、別の大型研究費を獲得している研究者が異分野に乗り出し、10年で成果を確立する時などに活用できそうだ。
日刊工業新聞2019年8月27日
山本佳世子
山本佳世子 Yamamoto Kayoko 編集局科学技術部 論説委員兼編集委員
研究と大学の一体的改革は、文科省の2020年度概算要求で大きなテーマ。細かくいろいろある中で、目玉はこの新事業だ。背景には初夏の政府の方向性で出された「研究支援人材や教員本人の人件費を、競争的資金から出せるようにする」という制度変更がある。そのため本事業は単なる研究助成ではなく、この制度改革を後押しという役目がある。1人年3000万円程度と大きめの予算が10年も付くのは、この使い方を想定しているためだろう。例えば3000万円で研究提案が採択され、教員本人の人件費1000万円をここから出すとなれば、研究そのものに使える予算は2000万円だ。「この仕組みは研究費を圧迫するのでは?」と心配する声もあるが、強制ではない。ただ人件費手当を計画しない場合は、最初から「採択は2000万円」となるのだろう。資料が公表された段階で、もう少し突っ込んだ取材をしてみようと思っている。

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