モノづくり現場で女性登用する企業が直面する課題

大同特殊鋼が職場作り

知多工場で線材圧延工程に従事する、永久さん

 大同特殊鋼が、女性活躍の取り組みを活発化している。特に力を注ぐのが、モノづくり現場での女性採用だ。2014年以降、徐々に現場の体制を整え、技術系の仕事に従事する女性の数を増やしてきた。主要顧客である自動車メーカーをはじめ市場環境は急速に変化し、人口減少は進む。性別によって活躍の場が制限されない、多様性を生かせる職場づくりを急ぐ。(文=名古屋・政年佐貴恵)  大同特殊鋼は2014年4月に「ダイバーシティプロジェクト準備室」を設置し、10月にプロジェクトを正式に発足。18年10月には「ダイバーシティ推進室」に格上げし、活動を本格化させている。最初に注力すべきテーマに「女性活躍」を据え、その一つとして「モノづくり現場での業務を担う女性採用の門戸を広げる」ことを重点とした。  竹内加枝ダイバーシティ推進室長は「モノづくりを目指して入社した社員に、女性だからといって配属の選択肢を狭めたくないという強い思いがあった」と説明する。  工業高校を卒業し技術系を志望する新入社員のうち、男性は90%以上が現場に配属される。しかし女性は工場の検査工程や研究開発部門など、限られた所にしか配属できていなかった。  まず実施したのが、現場での受け入れ態勢の整備だ。各職場長に女性社員の配属に対する意見を聞くと同時に、トイレやロッカー、シャワールームなど、女性用の設備を拡充した。着手して2年程度で「就労環境の整備はほぼできてきた」(竹内室長)という。  取り組みを始めて1年、現場女性の第一号が誕生した。15年に入社した永久香那子さんだ。永久さんは工業高校卒業後、大同特殊鋼に入社し、企業内訓練校で実務に関わる知識などを習得。16年に鋼材をコイル状の線材に圧延する部署に配属され、中央運転室で材料の抽出や温度調整といった設備の運転業務を担当した。“親方”のような存在の上長に厳しい言い方で叱られることもあるが、永久さんは「むしろ差別されていないと思える」と、やりがいを感じている。  18年冬からは圧延材の寸法を調整したり、圧延機の整備をしたりする業務に従事している。素材そのものを扱うため「材質によって重さなどの挙動が全然違う。奥が深くて面白い」(永久さん)と、モノづくりの楽しさを実感している。以前に比べ力仕事が多いが「力もついてきて、時間がかかっていたこともスムーズにできるようになってきた」(同)。上司である知多工場圧延第二室の田中孝照線材係長は「アイデアを出して改善しつつ、誰もができる仕事、職場にしたい」と話す。  職場には永久さんの女性の後輩も入ってきた。永久さんは「できることを増やして任されるようになりたい」と意欲を燃やす。職場からは「女性初の班長や工長になれ」と期待をかけられているが、永久さんは「うれしい反面、プレッシャーもある」と苦笑。田中係長は「実力があれば男女関係なく班長や工長といった上の立場に登用する」と、さらなる挑戦を後押しする構えだ。  大同特殊鋼の技術系社員の女性比率は少しずつ上がってきたが、1・3%程度にとどまる。職場環境や制度などをさらに充実させる方針だが、残る課題は現場への意識の浸透だ。女性が男性と完全に同じことをできるわけではない。田中係長は「同じように扱うと言っても、同じようにしてはいけない部分もある。現場も初めてで、まだ手探りの部分もある」と明かす。竹内室長は「管理職向けの研修なども通じてダイバーシティーの考え方を根付かせたい」と話す。  女性特有のライフイベントにどう対応するか、といったテーマもこれからだ。取り組みをさらに進化させ、女性だけでなく高齢者なども含めたあらゆる人材が活躍する職場づくりを目指す。 <関連記事>

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