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複合酸化物で開発した欠陥ない径50ミリ単結晶、何に使う?

福田結晶技研が開発
複合酸化物で開発した欠陥ない径50ミリ単結晶、何に使う?

作製したSAMの無転位単結晶

 福田結晶技術研究所(仙台市青葉区、福田承生社長、022・303・0170)は、窒化ガリウムなどの基板に用いる新規の複合酸化物で、結晶欠陥(転位)が存在しない直径50ミリメートルの無転位単結晶を開発した。切り出したウエハーのX線トポグラフィー(XRT)評価では、ほぼ全面無転位化を確認した。今後は「レーザーをはじめパワーデバイスへの活用が期待できる」(福田社長)としている。

 引き上げ法により作製に成功した無転位単結晶はスカンジウム、アルミニウム、マグネシウム、オキサイドによる複合酸化物で、略称がSAM。半導体関連での無転位基板としてはシリコン以外では唯一になるという。結晶成長条件の独自な制御などにより無転位化に成功したとみている。

 SAMは窒化ガリウムに比べ格子不整合が小さく、窒化インジウムガリウムでは格子整合することから、窒化物半導体膜の低転位化につながり、作製するデバイスの高効率化など品質向上が見込まれる。

 今回の開発では結晶分析評価で立命館大学、東レリサーチセンター、佐賀県立九州シンクロトロン光研究センターなどの協力を得た。福田結晶技術研究所は、すでにSAMのウエハーのサンプル出荷を始めており、今後は大口径化などに向けて結晶メーカーなどとの連携を検討する方針。

 同社は2002年に設立。福田社長が東北大学金属材料研究所などで蓄積した結晶製造の技術をベースに、各種結晶成長の研究開発を進めている。
日刊工業新聞019年8月5日

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