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韓国が信頼を失った、「兵器拡散」防ぐ国際的な枠組み

日本は貿易管理の運用責任を果たす立場を貫く
韓国が信頼を失った、「兵器拡散」防ぐ国際的な枠組み

北朝鮮など第三国への軍事転用材料の流出も懸念されている(写真はイメージ)

 日本政府による韓国向け輸出管理の見直しは、兵器の拡散を防ぐため発足した輸出管理の国際的な枠組み「国際輸出管理レジーム」に基づき実行した措置だ。韓国側が貿易管理をめぐる政策対話に長期間応じず、信頼関係が崩れたことが背景にある。韓国側は反発姿勢を強めるが、日本側は貿易管理の運用責任を果たす立場を貫く。

 国際輸出管理レジームは、大量破壊兵器や通常破壊兵器の不拡散に向けた安全保障上の輸出管理に関する国際枠組みを指す。法的拘束力のない紳士協定だが、加盟国は同レジームの合意事項に沿って国内法令などを整備し、貿易管理を適切に運用している。

 現状機能する国際レジームは規制対象品目別に四つある。日本は発足年と同時に全てに加盟し、外国為替及び外国貿易法(外為法)で運用している。7月4日に発動した半導体材料3品目の韓国向け輸出管理見直しは四つの国際レジームのうち1996年に発足した「ワッセナー・アレンジメント(WA)」の基本指針に沿って実施した。

 WAで決められた規制は二つある。一つは軍事転用が可能な武器や汎用品を輸出する際に経済産業省の許可が必要な「リスト規制」。もう一つがリスト規制以外で大量破壊兵器と通常破壊兵器の開発などに用いられる恐れのある品目(木材・食品を除く)を対象にした「キャッチオール規制(補完的輸出規制)」だ。WA加盟各国は二つの規制を自国の貿易管理制度に反映している。輸出許可・不許可の判断は各国の裁量で決定できる。

 韓国はWAに加盟したが、大量破壊兵器のみをキャッチオール規制の対象範囲にしており、通常破壊兵器については現時点で法的根拠が確認できない。このため日本側は貿易管理を適切に進める上で、韓国との政策対話を定期開催し信頼関係を保ってきた。

 ただ、ここ数年、韓国側が政策対話の開催を拒否した上、輸出管理がおろそかになる恐れがある短納期発注や2国間貿易で「不適切な事案」が判明した。日本政府は安全保障上の問題を理由に不適切事案の内容を明らかにしていないが、「韓国との信頼関係が崩れた」(世耕弘成経産相)と判断し、輸出管理の見直しに踏み切った。


「世界経済やサプライチェーンへの影響はない」


 2日には韓国を貿易管理上の優遇措置対象国から除外する政令改正を閣議決定した。韓国が優遇措置の対象から外れると、キャッチオール規制の対象国となり、韓国向け輸出は案件ごとに経産省の個別許可が必要になる可能性がある。

 日本政府による一連の措置は禁輸ではなく輸出管理の運用見直しで、台湾や東南アジア諸国連合(ASEAN)など韓国と同じカテゴリーに入る国・地域との経済活動は円滑に進んでいる。経産省の岩松潤貿易管理課長は「(対韓輸出管理の見直しによる)世界経済やサプライチェーン(供給網)への影響はない」としている。
                        

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