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中小の事業承継、メガバンクが支援を本格化し始めた

ファンド・M&A・人材育成
中小の事業承継、メガバンクが支援を本格化し始めた

後継者不足は喫緊の課題(イメージ)

 経営者の高齢化に伴い、後継者が見つからず廃業を余儀なくされる中小企業が相次いでいる。2025年頃までの10年間累計で約650万人の雇用、約22兆円の国内総生産(GDP)が失われるとも試算され、影響が懸念されている。こうした中、3メガ銀行も中小企業の事業承継支援を本格化している。(文=浅野文重)

グループ力結集


 みずほフィナンシャルグループ(FG)は、銀行、信託、コンサルティングなどグループの力を結集し、事業承継支援に取り組む。みずほ信託銀行は全国のみずほ銀行の店舗網を活用し顧客からの問い合わせを受け付け、後継者問題に悩む経営者の相談に対応。件数を着実に伸ばしている。

 またみずほ銀行とみずほキャピタルは連携し、事業承継に特化した100億円規模のファンドを本年度中に立ち上げる予定。ファンドを通じ、資金面からも円滑な事業承継を紗サポートする狙いがある。1号ファンドは当初、50億円の計画だったが、もっと多くのニーズがあると見て、50億円を上乗せした経緯があるという。

豊富な企業情報


 三菱UFJ銀行は他社との連携などで事業承継を支援する。6月にオンラインマッチングのバトンズ(東京都千代田区)と業務提携。同社の強みを生かし、従業員10人未満の企業や個人経営者の事業承継を後押しする。

 バトンズの親会社である日本M&Aセンターとも協力し、豊富な企業情報から最適なマッチングを提案する。三菱UFJ銀行は「一番の悩みである事業承継支援」(中村昭彦副頭取)に力を入れることで、中小企業の事業活性化につなげる。

30代前半に絞る


 三井住友銀行も小規模事業者の後継者問題解消を支援する。中小企業の事業支援を手がける「ベンチャー型事業承継」(東京都千代田区)と協力し、主に後継者を対象とする研修プログラムやセミナーを開催する。同社の奥村真也事務局長は「チャレンジ精神の旺盛な30代の前半に絞り、経営者の育成している」という。

 事業承継問題がもたらす経済への深刻な影響が懸念される中、政府や自治体、M&A会社、コンサルタント会社、地銀なども、この問題を解消する取り組みを本格化している。事業承継関連分野はビジネスチャンスの一つと見る向きもあり、今後、どこまで経済の好転につながるかが注目される。
日刊工業新聞2019年8月1日

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