クラウドソーシングで値崩れが起きる二つの要因

連載・シェアリングサービス ユーザーレビュー神話はどこへ(2)

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 個人取引の信頼構築はビジネスにおける永遠の課題だ。シェアリングサービスでは売り手と買い手が互いを評価することで双方に緊張感が生まれ、健全な取引がなされると期待される。だがレビューの星の数の売買、受発注の双方で談合も可能だ。国内のクラウドソーシングサービスなど、スキルシェアリングのプラットフォームでは星の数が上限値をとるワーカーが非常に多い。信頼が崩れるとサービスの値崩れの一因になる。(文=小寺貴之)  あるマッチングサイトで紹介されるライター200人の星の数は大半が最大評価の5・0で、4・8以上が4分の3を占める。2割は未評価者だ。評価の低いワーカーを探す方が難しい。ただ星の数と発注者の評判は必ずしも一致しない。  ある業界関係者は「発注側の評価能力を含めて評価が当てにならない」と指摘する。ワーカーの質がわからないと一つの仕事を複数人に頼み、その中からいい成果物を選ぶ。仕事料は一人ひとりに払うため、「2人に頼めば単価は半分、3人に頼めば単価は3分の1にせざるを得ない」と話す。これが表に出る仕事の単価が下がる一因になっている。  もう一つの値崩れの要因が“善意”だ。スキルシェアサービスの役員は「暇だし、それくらいならタダでやってあげるという善意が値崩れを招いている」と指摘する。副業や自分磨きとして請け負う仕事も割安になる。  現在はレビューの形骸化と善意による価格低下、どちらの影響力が大きいのか計れていない。善意の供給量には限界があり、多くの人が適正な値段を探っている。ただ市場原理で競争均衡にたどり着く前に、次々に新しいコンセプトのプラットフォームが登場する。  そしてレビューはユーザー同士が評価し合う以上は介入を防げず、星の数が適正な値になったとしても報酬を決める指標にならない可能性もある。結果、フリーランスなどの弱い立場の個人が市場原理に抗えないでいる。産業の競争政策に詳しい実積寿也中央大学教授は「ECなどのプラットフォーマーの台頭後、法人の間の取引の公正性が社会問題になった。個人間取引は数が膨大で問題はより難しい。暗中模索の状態だ」と指摘する。  こうした問題はシェアリングエコノミー特有の問題ではなく、人間社会がもともと抱えていた問題だ。泣き寝入りしていた個人や取引もデジタルに可視化され、記憶だけでなく記録が残るようになった。科学のメスを入れるチャンスではある。 【04】単発バイトマッチングアプリが実現したい社会(8月1日配信) 【05】理系学生のスキルシェアが示す新たな仲介モデル(8月2日配信)

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