世界最貧国「マラウイ」の発展支える、従業員7名の日本企業

ローテクに宿る競争力

現地で稼働する乾燥機を視察するマラウイのンダラ産業・貿易・観光省次官(左)とバンダ駐日大使(右)(2018年2月)

 経済成長とともに購買力の高まりが顕在化する都市部に照準を合わせたビジネスだけでなく、一次産業からの発展を目指す国が直面する課題の中にも、日本企業の商機があった。  アフリカ南東部に位置する小国、マラウイ。国民の8割が農業に従事する農業国だが、その生産性は低く、世界最貧国のひとつである。喫緊の課題は、一次産品頼みの構造から脱却し、新たな産業や雇用を生み出すことである。  そんな同国で、いま引く手あまたの食品加工機械は実は日本製。愛媛県に本社を構えるエヌエスコーポレーションが開発・製造を手がける。柑橘類の搾汁や皮の加工、種取りの機械など、食品加工分野を中心に展開する多種多様な専用機のひとつ、ドライフルーツ製造用の機械がマラウイで稼働して早3年になる。  もともとは、古い機械のメンテナンス業務をメーカー問わず請け負うことで創業した同社。海外の製造現場では誰も直し方を知らない機械が少なくなく、メンテナンスニーズはひときわ大きい。こうした声に応える傍ら、独自製品の開発にも取り組んできた。コンセプトは「機械的な修理が可能」「人間の動作に近く使い勝手がよい」と至ってシンプルである。  これら製品は、マラウイをはじめ、タイや中国、バングラディシュなど世界各国に輸出実績がある。ダマスカスローズで知られるトルコでは、バラの花びらを乾燥させる機械が利用されているという。  そもそも同社とマラウイとの関わりは、同国の産業化や起業支援を狙いに愛媛県が実施したプロジェクトがきっかけだ。同国に設立された別の企業の現地法人で同社の食品加工機を導入したところ、過酷な作業環境に適応する耐久性や故障が少なくメンテナンスが容易といったタフさや省電力であることが現地ニーズに合致。マラウイは電力供給が不安定なため、太陽光発電装置が後付けできるなどカスタム化が可能なこともユーザーの心をつかんだ。  「海外市場から引き合いのある当社製品は決して奇抜なものではなく、むしろローテクです。逆にそれが受けているのかもしれません」。創業者の仲井利明氏は淡々とこう語る。  従業員わずか7名の典型的な家族経営の企業だが、「問い合わせがあれば世界のどこにも飛んでいきますよ」とフットワークの軽さ、機動力が垣間見える。実際、2000年代に自社ホームページをグーグル翻訳で多言語に変換できる機能を付加したところ、海外からの問い合わせが急増。噂を聞きつけたアフリカの政府関係者が同社を訪れたこともあるという。  機械化や工程の省力化を通じて生産性や品質の向上を実現したいという現場ニーズが根強いのはマラウイに限らない。仲井氏は、今回のマラウィでのビジネスを足がかりに、タンザニアやケニアといった他のアフリカ諸国での事業展開も視野に入れている。  アフリカ諸国での日本企業の事業展開を支援するコンサルティング企業「アイ・シー・ネット」。自身もケニアで起業経験のある横山裕司グローバルビジネス支援事業部アフリカ事業グループリーダーは、アフリカビジネスに対する日本企業の変化をこう語る。  かつて日本企業がアフリカに進出する際は、純粋なビジネスというよりも、CSR(企業の社会的責任)やBOP(ベース・オブ・ピラミッド)ビジネス(低所得層でも購入できる製品などを提供し、進出国の生活水準の向上と企業成長を両立させる発想)の視点が色濃かったように感じます。しかし、ここ数年で企業マインドは変わりました。アフリカを特別視するのではなく、自社の強みが生かせる市場のひとつとして当然の選択肢と捉える傾向が強まっているのです。  前述のエヌエスコーポレーションの進出理由は「そこにニーズがあるから」と至ってシンプル。その経営姿勢は自然体で、市場ニーズに対する柔軟な対応力や意思決定の迅速さは、本来、中小企業が持ち合わせている強みを体現しています。  国として、市場としての基盤整備は途上にあるアフリカですが、インフラとなり得る新たなサービスが相次ぎ誕生し、農業分野などでは生産者と消費者がつながるフードバリューチェーンも構築されつつあります。こうしたビジネスに携わる日本人経営者も少なからず存在します。そして、こうしたバリューチェーン構築の動きをさらに加速させるのがテック系を中心とするスタートアップ企業です。  アフリカビジネスは長期的視点から事業基盤を構築していく息の長い取り組みであることは事実です。ODA(政府開発援助)プロジェクトからスタートし、数十年に及ぶ実績を重ねながらいまだ試行錯誤という企業も少なくありません。  一方で、日本ならではの経営理念や製品特性が、現地で通用し、受け入れられることもまた事実です。アフリカに対する特別な思い入れがある企業だけでなく、より多くの企業にとって挑戦するに値する市場ではないでしょうか。(談)

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