素材開発にAIをフル活用!マテリアルズ・インフォマティクスとは?

おすすめ本の本文抜粋「マテリアルズ・インフォマティクス」岩崎 悠真 著

 近年、様々な分野で 人工知能( AI: Artificial Intelligence)の技術に期待が寄せられています。皆さんに大きなインパクトを与えた出来事といえば、AIによるボードゲームでしょう。例えば、2016年に囲碁のAI(AlphaGo)が世界最強のプロ棋士(イ・セドル氏)に勝利し、その翌年、将棋のAI(Ponanza)は叡王戦覇者の佐藤天彦名人を破りました。AIが、その領域のトップに君臨する方々を打ち負かしてしまったことは、世界中に衝撃を与えたと同時に、人々に期待と不安をもたらしました。  そのAIの中核をなすものが、機械学習と呼ばれる統計数理に基づいた技術。そして、この 機械学習を含む情報処理技術をフルに活用し材料開発を進めていく分野を、マテリアルズ・インフォマティクス( MI: Materials Informatics)と呼びます。  MIは、この機械学習に加え、物性理論、実験、シミュレーション、 データベース、クラウド、 ロボティクス、 プラットフォーム、IoT、通信、セキュリティ……などなど、様々な技術が統合されて成り立っている分野といえます。  さて、MIの非常に大雑把なイメージが図に描かれています。科学者と人工知能が一緒になって材料開発をしていくというイメージです。この図で重要なのが、MIの主役は物理・化学・材料学などの専門知識を持った科学者、つまり人間であり、人工知能や機械学習は、あくまで人間をアシスト(補助)するツールであるという点です。  囲碁AIや将棋AIの場合は、すでに人間を凌駕した存在になってしまったと言えますが、それは、ボードゲームで解くべき問題が比較的単純だからです。例えば将棋の場合、試合の進め方や駒の動かし方といった“ルール”が明確に決められており、相手に勝つ(相手棋士の王将をとる)という“目的”もはっきりしています。  こういった問題はAI(機械学習)に任せやすい領域です。一方、材料開発の場合は特に決まった“ルール”というものがありません。どんな材料をどのように作るかは自由です。このように“ルール”が曖昧な分野の問題を、機械学習で解くのは大変です。  例えば、将棋AIに将棋のルールを与えず、相手に勝つ(相手棋士の王将をとる)という目的だけ与えたとしましょう。するとどうなるでしょうか。もしかしたら、『相手棋士を殴って王将を奪い取る』という行動が、目的を達成するために最も効率的な選択になるかもしれません。  将棋のルールが与えられている場合は、盤面のことだけを考えていればよいのですが、ルールが曖昧になった途端、相手棋士の筋肉量・反射神経など色々なことを考慮する必要が出てきます。上記は極端な例ですが、このようにルールが曖昧になると、考えなければならない事柄が爆発的に増え、問題が難しくなります。  材料開発は、まさにこのルールが曖昧な分野です。そのため、AIや機械学習さえあればすべて解決する分野ではありません。人間が、物理・化学・材料学などの専門知識を使って上手に材料開発における問題設計(ルールや目的の設定)をし、その問題を解くのに適した機械学習を使いこなしながら、材料開発を進めるということが重要になるのです。 (第一章「マテリアルズ・インフォマティクスとは」p2-4より) 書籍紹介 マテリアルズ・インフォマティクス 材料開発のための機械学習超入門 岩崎 悠真 著、A5判、152ページ、税込2,592円 材料開発を効率的に行うため、材料科学とデータ科学を融合させたマテリアルズ・インフォマティクス(MI)が注目されています。本書は、そんなMIの基礎と、MIに欠かせない機械学習を学ぶ、「超」入門書です。 著者紹介 岩崎悠真 NEC中央研究所 システムプラットフォーム研究所主任 JSTさきがけ研究員「理論・実験・計算科学とデータ科学が連携・融合した先進的マテリアルズ・インフォマティクスのための基盤技術の構築」 販売サイトへ 目次 第1章 マテリアルズ・インフォマティクスとは 機械学習とマテリアルズ・インフォマティクス 機械学習さえあればすべて解決するの? 材料開発における機械学習のメリット 第2章 材料開発における機械学習の基礎知識 機械学習ってそもそも何? 予測性能が良いと『真のモデル』に近いの? 相関関係と因果関係 第3章 機械学習アルゴリズムとその材料開発への応用 線形回帰と蓄電池材料開発 ニューラルネットワーク(MLP)とSiC材料シミュレーション 階層的クラスタリングと結晶構造解析 ↓画像をクリックしてamazonへ↓

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