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「土用の丑の日」日本人が食べるウナギの99%は養殖って知ってた?

おすすめ本の本文抜粋「トコトンやさしい養殖の本」近畿大学水産研究所 編
 ウナギの仲間は世界中に19種類いますが、日本人が主に食べているのはニホンウナギという種類です。ニホンウナギは日本列島のほか、韓国、中国、台湾にも分布しています。これらの分布域の沿岸や河口には、毎年晩秋から春にかけて全長5〜6㎝の透明なシラスウナギと呼ばれる稚魚が来遊し、河川や湖、沿岸などで5〜10年ほど過ごして親ウナギになります。親ウナギがどこで産卵しているのかは最近までよく分かっていませんでしたが、2009年にマリアナ海溝周辺の海面下200m付近で受精卵が採集され、日本から2000㎞も離れた場所で産卵していることが突き止められました。孵化した赤ちゃんウナギは透明な柳の葉のような姿のレプトセファルス幼生となって海流に乗り西へ、そして北へと運ばれながら半年ほどでシラスウナギに変態し、東アジアの沿岸にたどり着くのです。

ウナギの回遊経路(イラスト:角一葉)

 2016年に日本で消費されたウナギは約5万トンで、そのうち国内の養殖生産量が2万トン弱、中国や台湾から輸入された養殖ウナギが3万トンあまりとなり、天然ウナギの漁獲量はわずか70トンほどに過ぎません。私たちが食べているウナギの99%以上は養殖ウナギなのです。
 ウナギの養殖は、天然のシラスウナギを捕獲して水温を30℃近くまで高めた養殖池で行います。配合飼料に魚油や水を加えて練り合わせた餌を食べさせ、半年から1年あまりで蒲焼にできるサイズまで育てます。しかし、養殖に必要な天然の稚魚は絶滅が心配されるほど減少しており、資源管理に向けた対策が進められています。その対策の一つとして、わが国では人工孵化した赤ちゃんウナギを親ウナギに育てて卵を産ませ、さらに次世代の稚魚を生産する完全養殖を目指し、2010年に世界で初めて成功しました。今後、低コストで大量生産する技術を開発して実用化することが期待されます。(第4章「ウナギの養殖」p88-89より)


書籍紹介
今日からモノ知りシリーズ トコトンやさしい養殖の本
近畿大学水産研究所 編、A5判、160ページ、税込1,620円

日本の食にとって魚はかかせないもの。その魚を育てる養殖が今、世界中で注目されています。実は紀元前まで遡る養殖の歴史に始まり、マグロをはじめ様々な魚の養殖や、養殖で必要な技術、そして未来の養殖についてもやさしく解説します。

著者紹介
近畿大学水産研究所
長年にわたり養殖技術の研究に取り組み、世界の水産養殖・種苗生産の最前線に立っている。2002年、クロマグロの完全養殖を世界で始めて成功させ、大きな注目を集めた。

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目次抜粋(全66項目)
第1章 養殖の基本を知ろう
養殖のはじまり「太古より行われていた養殖の歴史」
養殖魚がお店に並ぶまで「養殖魚の流通の特色」
世界の養殖業「ダントツの養殖大国はあの国」

第2章 卵から魚を育てる生産技術を知ろう
有害プランクトンが歴史を変える「有害プランクトンにも使い道がある」
ワムシの培養技術「省力化が進むワムシ培養技術」
仔魚を育てる方法「仔魚の飼育施設と餌料系列」

第3章 クロマグロとその完全養殖を知ろう
クロマグロの仔魚から幼魚までの育て方「完全養殖に欠かせない種苗生産技術」
売値を左右する出荷方法「正しい処理で商品価値を高める」
ハイリスクなクロマグロ養殖「天災・魚病などが大きな損失の原因」

第4章 さまざまな養殖を知ろう
ブリの養殖「海水魚養殖の先駆けとなった出世魚」
ウナギの養殖「日本の食文化「蒲焼」を支える養殖ウナギ」
サケ・マスの養殖「川と海の両方で発展した養殖の古株」

第5章 餌や飼料の大切な役割を知ろう
餌の種類と役割「成長度合や魚種によって餌は異なる」
養殖魚の病気「養殖魚だって病気になる」

第6章 漁場環境を整える
養殖は海を汚す!?「残餌や排せつ物による自家汚染」
海への負担を減らす「餌の種類とやり方がカギ」

第7章 より優れた品種を誕生させる
品種改良の歴史「多くの魚が品種改良から生まれた」
借り腹技術「サバのお腹を借りてマグロを増やす」
遺伝子操作「遺伝子操作で品種改良の効率化を目指す」

第8章 養殖の課題と対策、最新の技術を知ろう
輸出される養殖魚「輸出を促進して養殖生産量を増やす」
養殖でICTを利用「スマート養殖による効率化」

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