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ランチや社内表彰はタイムラインで共有…広がる「人材施策にSNS」

社内活性効果を見える化
 社内の意思疎通にメッセージアプリケーション(応用ソフト)や社内会員制交流サイト(SNS)を採用する中小・ベンチャー企業が増えている。これに伴いSNSマーケティングの手法が人材施策に浸透し始めている。「いいね!」ボタンを押すように社員同士で「サンクスカード」を贈り合ったり、日頃交流のない社員を無作為に集める「シャッフルランチ」など、社内活性化策の効果をSNSで測り、施策を改善する。チャットボット(自動応答ソフト)による面談代行もある。

数字で把握


 「数字で把握できるため効果を実感してもらえている」とスタメン(名古屋市中村区)の森山裕平執行役員カスタマーサクセス部長は自信をみせる。同社は社内SNSや従業員データベースを備えた人材管理システム「TUNAG(ツナグ)」を提供する。社内の活性化策は効果が見えにくい。だがサンクスカードは集計でき、組織が掲げる行動規範や理念に沿った人を褒めれば謝意に色をつけられる。ランチや社内表彰などのイベントはタイムラインで共有して、寄せられたコメントから効果を計れる。

 一般のSNSには声の大きな少数派が雰囲気を決め、声を上げない大部分が冷めてしまう課題があった。森山執行役員は「積極的な2割と消極的な2割がいるとしたら、真ん中の6割に響く施策を打つ」と話す。特別休暇などの人事制度は利用率、社内メッセージは既読数などを基に行動を促すよう改善する。

面談代行


 サイダス(那覇市)は人材管理システムに加えて面談代行のチャットボット「banto(番頭)」を7月末に発売する。一人ひとりにその日の進捗や課題、次の挑戦を質問する。質問はサイダスのコンサルタントと組織の目標を個人の目標に分解して決める。

 毎日終業時にボットの質問に答えると、組織の目標達成率がグラフ化される。bantoプロジェクトチームの高橋和夫事業統括責任者は「プレーイングマネジャーは忙しく面談は定着しにくい。ボットで対話を支援し、困難を抱える本当に話した方がいい人を見つけやすくなる」と説明する。

 仕事が順調なメンバーはボットに答えるだけなら心理的な負荷も少ない。「スラック」などのビジネスチャットとも連携し、月額は1人当たり300円。現実の面談と連動させるために2019年内に音声認識AIを活用した議事録作成支援も始める。

AI活用も視野


 こうした社内SNSなどのデータがたまると、人工知能(AI)技術やビッグデータ(大量データ)を用いた解析も視野に入る。AI活用をきっかけに、人材データベースの構築業務そのものを狙う企業もある。パーソル総合研究所(東京都港区)の遠藤崇之シニアコンサルタントは「データを集め組織を可視化することは大切な第一歩。ただAI技術は支援ツールであり、人間がマネジメントすることが重要」と指摘する。パーソルも人材管理システムを提供する。ただ人間が働く中でデータにならない要素は多い。また人間を納得させ行動を変えるには数字だけでなくストーリーが必要だ。AIの分析結果の解釈や、キャリアとしての意味づけは人が担うことになる。人間味を守りつつ、デジタル化が進んでいる。

サイダスの面談代行チャットボット「banto」の画面
日刊工業新聞2019年7月18日
小寺貴之
小寺貴之 Kodera Takayuki 編集局科学技術部 記者
 人材活性化策にウェブやSNSマーケティングの手法を入れると、その効果を数字で計れたような気がします。森山執行役員は「実際にやると、意外に40代や50代が盛り上がる。若手の方が社内での自己開示に抵抗がある」と指摘します。これが組織に浸透すると社内でもペルソナを被るようになるのでしょうか。いま会社で被っている仮面と、どう変わるのか。結果として組織は上手くいくのか。記録が残るので組織生産性の研究としては、とても面白いテーマになりそうです。大きな組織では怪文書のようなフェイクも流れるのかもしれません。サラリーマン漫画にも反映されるでしょうか。  他方で、データ活用やAI活用を謳って毎週のように社員にストレスチェックを課すシステムを売り込むベンチャーもあります。その企業には、社員が入力し続ける継続率や脱落率のデータはないそうです。データ入力に業務時間をとられると本末転倒ですが、データ活用よりもデータベース構築の方がいいビジネスになるのかもしれません。

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