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お金を儲ける続けるサッカークラブの条件

イングランドに勢い
 欧州のサッカー国内リーグは、前年度のリーグ優勝チームなどが参加するチャンピオンズ・リーグの決勝で幕を閉じた。決勝に駒を進めたのは、ともにイングランド・リーグに属するリバプールとトッテナム。結果は2対0でリバプールが14年ぶりに優勝を飾った。

 今年の5月、コンサルタント会社のKPMGが恒例の、欧州のサッカー・クラブの企業価値(エンタープライズ・バリュー)を発表している。入場料、放映料、広告料などの収入、選手の価値、成績、SNSなどのフォロワー数などさまざまな指標を使ってクラブの価値を算出し、32チームを選出している。32チーム全体の企業価値は2年連続で前年比9%の伸びを記録した。

 チーム別の1位はスペインのレアル・マドリードで企業価値は32億2400万ユーロ(約3930億円)、2位は英国のマンチェスター・ユナイテッドで32億700万ユーロ、3位はドイツのバイエルン・ミュンヘンで26億9600万ユーロ、4位はスペインのバルセロナで26億7600万ユーロ、5位はマンチェスター・シティで26億6000万ユーロだ。この32チームを国別に見ると、イングランドが9チーム、イタリアとスペインが6チーム、独仏が3チームずつと続いている。

 イングランドの優位をもたらしたものの一つは巨額の外部資金である。欧州のサッカー・クラブは会員および地元の有力者の資金によって維持されるのが一般的だが、それが破られたのがイングランドだ。

 趣味として、あるいはビジネスとして、サッカーに巨額を投じる外国人が現れた。ロシアの石油王、アブラモビッチはチェルシーに投資、マンチェスター・シティにはアブダビの資金が流れ込んだ。マンチェスター・ユナイテッドは米国の実業家グレイザー兄弟が会長を務めている。リバプールの現在のオーナーは米国の実業家ジョン・ヘンリーだが、彼は米国の野球チーム、ボストン・レッドソックスのオーナーでもある。

 こうした潤沢な外部資金により、各クラブは世界的なプレーヤーをスカウトし、チームを強化するばかりでなく、有能な監督も招聘(しょうへい)している。2018・19シーズン当初のイングランド・リーグの監督のうち、地元出身者はわずか4人、上位6チームの監督は全て外国人であった。

 外部資金の獲得とともに欧州サッカー界が力を入れているのが、アジア市場の開拓強化だ。公式試合の放映を行い、ファンクラブをつくり、グッズの販売などを行っている。

 これからはプレ・シーズンで、トレーニングを行い、練習試合を行う予定だが、近年はファン獲得を目指し、米国やアジアで試合を行うようになっている。日本にもバルセロナやチェルシーが来る予定である。

(文=新井俊三<国際貿易投資研究所客員研究員>) 
日刊工業新聞2019年7月11日
明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役デジタルメディア事業担当
現在、移籍市場の真っ最中。レアルとバルサのリーガ2強が大型補強で話題を独占している。しかもレアルにはバルサのカンテラ出身の久保君が入団。実力を買われてのものだが、日本人選手がアジア市場狙いに強豪クラブに引き抜かれるケースが増えそう。

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