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格安スマホ再編進むか…楽天「DMMモバイル」買収で見えたある数字

買収額は23億円
格安スマホ再編進むか…楽天「DMMモバイル」買収で見えたある数字

三木谷浩史・楽天会長兼社長

 楽天は9日、DMM.com(東京都港区)の格安スマートフォン事業を買収すると発表した。約24万人のユーザーが楽天グループに加わり、楽天の格安スマホの契約数は約1割増の220万件になる見通し。同社は10月に携帯電話サービスに参入予定で、顧客基盤を拡充する狙いだ。格安スマホ市場では携帯大手の値下げプランが相次ぎ、顧客獲得に向けて厳しい戦いが続く。今回の買収をきっかけに、格安スマホ市場で再編の波が一段と広がる可能性がある。(文=大城蕗子)

 楽天の携帯電話事業を手がける子会社・楽天モバイル(東京都世田谷区)は、DMMの格安スマホ事業「DMMモバイル」などを会社分割し、9月1日に継承する。買収額は23億円。

 DMMモバイルは顧客向けに自社が展開する動画サービスやゲーム、電子書籍などの利用を促し、それを付加価値としてきた。今後もブランドやサービス、料金は継続するが、DMMモバイル顧客に付与していた「DMMポイント」は9月以降、楽天のポイント付与に切り替える。楽天は新たに獲得する24万人に電子商取引(EC)や金融などの楽天サービスの利用を促し、一人のユーザーが複数サービスを使う「クロスユース率」を高める狙いもある。

 一方、顧客獲得で厳しい戦いを強いられてきたDMMモバイル。MM総研の横田英明取締役は「仮想移動体通信事業者(MVNO)市場が成長の勢いが減速し、運営に迷いを感じる格安スマホ事業者が多い。DMMはそんな状況下で楽天からのオファーを受け入れたのだろう」と説明する。また同取締役によると、「買収による顧客獲得単価は、サービス価値によって決まることが多い。今回の買収は数年前と比較すると単価が約25%低くなっている」という。

 携帯電話市場では政府の要請で「4割値下げ」プランを携帯大手が打ち出し、格安スマホ事業者は価格だけでの差別化が難しくなっている。また今回のように、買収による顧客獲得コストが低下する可能性もあり、今後も大手事業者による吸収が起こるかもしれない。

              
日刊工業新聞2019年7月10日の記事に加筆
日刊工業新聞記者
日刊工業新聞記者
格安スマホ市場の再編を巡っては、直近では楽天が17年に格安スマホサービス「フリーテル」を、18年にはソフトバンクがLINEモバイルを買収しています。(日刊工業新聞社・大城蕗子)

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