食品ロス対策、意外な効果はニッポンの食品サンプル技術?

643万トン、どう減らす?

食品ロス削減に向け、食品サンプルの利用も増えそうだ

 賞味期限切れや売れ残った製品、飲食店での食べ残しなど、本来食べられる食品が廃棄されてしまう「食品ロス」の削減に取り組む動きが活発化してきた。5月には食品ロス削減推進法が成立。国としては循環型社会の形成や環境保全につなげるのが大きな狙いだが、食品ロスは企業と消費者にとっても収益や家計に関わる切実な問題だ。食品ロスを削減するには国や自治体、企業、消費者が協力して対策を講じる必要がある。  全国に5万店舗以上あるコンビニエンスストア。さまざまな商品やサービスを提供しているが、売上高の構成比で日配食品・加工食品が過半を占める。食品ロスはコンビニ各社にとって大きな課題であり、値引きなどによる食品ロス削減に乗り出している。  ローソンは11日から愛媛県と沖縄県の合計約450店舗で、消費期限が迫った弁当やおにぎりを購入した顧客にポイントを付与する実験を始めた。  先行して店内調理の総菜などは各店舗の判断で値引きしてきたが、今回はポイント付与分を本部が負担する。愛媛県の実験では16時から翌1時までの間に、「アナザーチョイス」シールが付いた対象商品を買うと、100円につき、5ポイントが消費者の持つ共通ポイント「ポンタ」かNTTドコモの「dポイント」に還元される。さらに、商品の売上高の5%が子育て支援団体に寄付される。  二つの社会課題解決に同時並行で取り組む形で、竹増貞信ローソン社長は「ロス削減だけではなく、お腹を空かせた子どもたちにもしっかり食べてもらいたい」と説明する。  実験開始からまだ間もないが、他地域の加盟店オーナーからも「うちもやってみたい」と支持する声が届いているという。2030年までにローソン全体の廃棄量を18年度比で5割削減する目標を掲げる。  セブン―イレブン・ジャパンは今秋から全国のセブン―イレブン約2万店舗で、消費期限が近いおにぎりなど数百品目を対象に、5%程度のポイント還元を始める。セブンの電子マネー「ナナコ」での購入者にポイントを付与する。  ファミリーマートは7月の土用丑の日に販売するうなぎ弁当を皮切りに、恵方巻きやおせちなど季節商品を完全予約販売にする。食品の廃棄費用を22年度までに18年度比で1割減らす計画だ。  食品ロスを削減するには製造から販売までサプライチェーン全体を通して取り組まなければならず、さらに消費者の意識を変える仕組みも必要だ。  コークッキング(東京都港区、川越一磨社長)は、食品ロス削減を事業の柱に据えたスタートアップ企業。飲食店と消費者をつなぐプラットフォーム「TABETE(タベテ)」を展開する。  飲食店は売り切りたい食品を出品し、消費者は事前決済で食品を購入して店舗に取りに行く。飲食店は売れ残りによる廃棄を減らせる。消費者は割安で食品を購入し、食品ロス削減に貢献できる。安全に食べられる食品と買い手をつなぐことで持続可能な社会の実現を目指す。  同社は18年4月にサービスを開始し、iOS向けアプリケーション(応用ソフト)は同年8月にリリース。アンドロイド向けは19年1月に提供した。ユーザーは30―40代の働く女性が多いという。課題はタベテを利用できる店舗が都内に集中していること。今後は大手飲料メーカーと連携し、利用店舗の拡大を進めていく。  食品メーカーにとっても食品ロスは重要な問題だ。原材料を無駄なく活用し、いかに歩留まりを高めて製品をつくるか。廃棄物の削減が収益に直結するだけに生産効率化を進めるのは当然だ。製造工程でロスを減らすことはもちろん、自社製品が食品ロスとならないようにする取り組みが求められる。  カルビーは原料や保管、製造時の工夫など品質改良によって、製品の賞味期間を従来よりも長く保証できるようにした。これに伴い、ポテトチップス商品の賞味期限を延長するほか、期限の表示も「年月日」から「年月」に切り替える。  6月製造分から順次実施し、「ポテトチップスクリスプ」は賞味期限が従来の12カ月から13カ月に、他のポテトチップス商品は4カ月から6カ月に10月以降変わる。  例えば賞味期限が6月17日と表示されたクリスプは明日以降は店舗の売り場から外され、消費期限ではないのに家庭で廃棄されていたかもしれない。賞味期限が延び、表示も月単位になったことで廃棄される量が減る。店舗でも棚卸しや商品管理を効率化できるメリットがある。  食品ロス問題は世界的に関心が高まっている。新潟市で5月に開かれた主要20カ国・地域(G20)農業相会合でも食品ロス削減を目指す宣言を採択した。  日本の食料自給率は4割に満たず、多くを輸入に頼る。その状況下で食品ロスは依然として高い水準で発生している。農林水産省の調査によると、16年度は食品由来の廃棄物が2759万トンあり、可食部分だと考えられる量はその2割以上の643万トンもあった。  内訳は家庭から291万トン、食品メーカーや小売り、外食など事業者から352万トン。15年度に比べ事業系は5万トン減ったが、家庭系は2万トン増えている。  食品ロスは国や企業が積極的に取り組まなければ削減は難しい。コンビニ各社は値引きで食品ロスの削減につなげる考えだが、値引き販売をめぐっては09年に公正取引委員会が本部の値引き制限は独占禁止法違反に当たるとして排除措置命令を出した。しかしこれまで値引き販売は加盟店で広がってはいなかったが、食品ロス削減への対応をきっかけに状況が変わりつつある。  国や企業とともに消費者を巻き込んだ国民運動にしなければならないという声もある。5月には食品ロス削減推進法が成立した。国が食品ロス削減推進の基本方針を定め、自治体には削減推進計画を策定するよう努力義務を課す。食品製造工程で発生する規格外品などを国や自治体、団体が譲り受け、福祉施設などに提供するフードバンク活動を支援することも盛り込まれた。  日本の土産として訪日外国人(インバウンド)に人気の「食品サンプル」。食品サンプル大手で製造・販売・貸し付けを手がける岩崎(東京都大田区)は、飲食店での販売促進のほかにも食品サンプルのさまざまな可能性を探る。その中の一つとして、食品ロス削減に向けた活用を提案していく。  食堂などではショーケース内や店頭で、その日のメニューとして実際に調理した食品を陳列していることがまだある。これは食品サンプルで代用可能であり、岩崎毅社長は「本物を飾って腐らせるよりは、サンプルに置き換えることで、食品の無駄を防ぐことができるのでは」と話す。  日本では今後、ラグビーワールドカップや20年東京五輪・パラリンピック、25年の大阪・関西万博など国際的なイベントが相次ぎ、会場周辺の飲食店を利用する観光客も増える。食品ロス削減は世界的な課題であり、食品サンプルは日本が真剣に取り組んでいることを示す良いサンプルになるかもしれない。 (文=丸山美和、川口拓洋、増田晴香)

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