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厳しい業績が続く石油精製・元売り。M&Aか撤退か

体力にある間に動かなければ共倒れに
 石油精製・元売り各社にとって厳しい経営環境が続いている。大手4社の2015年4―6月期連結決算(JXホールディングス傘下のJX日鉱日石エネルギーは単体)は、原油価格が1―3月期より持ち直したため在庫評価益が出て、利益が押し上げられた。だが売上高はいずれも、販売価格の低迷で前年同期を下回った。石油製品の国内需要が先細る中、収益基盤の強化に向けた業界再編の動きが加速しそうだ。

 大手4社の4―6月期は石油・石炭開発事業の採算が悪化した出光興産を除き、いずれも各損益段階で大幅に改善した。原油価格が直前の1―3月期に比べて上昇したため、備蓄原油にかかる在庫評価損益がプラスに転じたことが寄与した。12月期決算の東燃ゼネラル石油と昭和シェル石油も、15年1―6月期の在庫評価はマイナスだが、4―6月期に限ればプラスになった。

 一方で売上高は6社とも前年割れ。原油価格が前年同期より大幅に下落し、石油製品の単価が落ち込んだことが響いた。前年は消費税率の引き上げで需要が減退したため反動増が期待されたが、さほど振るわなかった。昭和シェルは太陽電池の販売価格低迷にも、収益が下押しされた。

 通期でも原油価格は前年水準を下回り、これに伴う販売価格の低迷で6社とも減収になる見通しだ。前期の利益を大きく下押しした在庫評価損が解消されるため、利益は大幅改善が見込まれるものの楽観はできない。

 長い目で見れば石油製品の国内需要は、人口減少などで急速に減る見通し。各社は厳しい国際競争を勝ち抜くための「コスト競争力の向上が不可欠。他社との再編や製油所連携はそのための手段の一つだ」(東燃ゼネラルの武藤潤社長)との認識で一致。出光と昭和シェルの経営統合に続く大型再編が現実味を帯びつつある。
日刊工業新聞2015年08月18日 建設・エネルギー・生活面
永里善彦
永里善彦 Nagasato Yoshihiko
石油精製・元売り業は、少子高齢化の日本では、大規模な移民政策が実行されない限り、典型的な成熟産業である。今後、原油価格が回復しても成熟産業が成長産業に代わるわけではない。成熟産業では売上高を競ってもナンセンスであり、利益率こそ重要である。現状の打開策として、撤退することができないのなら、ライバルとの合併か、M&Aによる成長事業の取り込みしかない。企業トップは、冷静に現状を分析し将来を予測して戦略を立て、体力のあるうちに実行に移さないと共倒れになろう。

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