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国立大に新交付金、支給基準は民間資金の「集金力」

内閣府が事業開始
 内閣府は、国立大学が企業から募る共同研究費や寄付などの集金力に応じて支給する新たな交付金事業を始める。民間資金獲得の実績と今後の計画を基に支給先を決める。全国86国立大から3年間で計13大学を選び、1大学当たり年最大5億円を支給する。民間投資拡大を促して国立大の経営基盤を強化しつつ、継続的なイノベーション(技術革新)を後押しする。

 28日に東京・霞が関の内閣府で国立大の担当者を集めた説明会を開き、初めて詳細を公表する。新たな交付金事業は、内閣府の2019年度新規施策「国立大学イノベーション創出環境強化事業」。文科省が支給する従来の運営費交付金や補助金に加え、内閣府による新たな交付金を新設し、国立大の民間資金獲得を促す。

 交付金を支給する選考条件は、各国立大が目指す役割で変える。国際的に優れた研究を進める東京大学など16の「研究型大学」は、産学共同研究費の中の間接経費の割合や伸び率を重視する。企業との共同研究で光熱費などを大学側が負担している現状を改善する。

 研究型以外の国立大は、大学収入に占める民間資金の割合の伸びも評価する。各大学の財務諸表データから対象を絞り込んだ上で公募し、民間資金の獲得計画をヒアリングして決める。支給期間は1大学2年間。
日刊工業新聞2019年6月27日
山本佳世子
山本佳世子 Yamamoto Kayoko 編集局科学技術部 論説委員兼編集委員
財務省が「この形なら」と認めた新事業は、予想もしないものだった。使途限定の補助金と異なり、交付金なら自由に(この場合はイノベーション創出の仕組みに向けたものなら何でもよい)使えるからだ。選定基準にも吟味が感じられる。国立大の3類型のうち「世界」を選んだ研究型大学に対しては、「産学共同研究費における間接経費をしっかり伸ばすように」と檄を飛ばす。支援対象として3年かけて、16大学から6大学を選ぶ。これに対して「地域」「特色」を選んだ大学は、自治体や個人の心を動かして獲得する寄付なども対象で、「大学収入における民間資金収入の割合の伸び」を見る。選ぶのは70大学のうち7大学(1割)で厳しい(1大学年5000万円のケースもある)面もある。しかし文系単科など小規模な大学でも、新交付金を得るチャンスがある点は、公平といえるのではないか。「政府の資金頼みではなく、各国立大がそれぞれの特色を生かして、民間資金を引き寄せてほしい」という内閣府の強いメッセージだと受け止めた。

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