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がん細胞を発光させて診断、毒性低い新素材の中身

バイオイメージング素材を開発
 長岡技術科学大学の片岡卓也博士学生と多賀谷基博准教授は、がん細胞などを発光させて診断をしやすくするバイオイメージング素材を開発した。骨に含まれるアパタイトが主原料で、従来の素材に比べて毒性が低い。クエン酸を混ぜて発光性を強めた。葉酸も加えることで、がん細胞表面への付着性も向上した。年内にも実用化にめどをつける。

 アパタイト内にあるカルシウムの一部を発光元素「ユーロピウム」に置き換えた上、クエン酸と葉酸を合成した。可視光を当てると赤く光る。クエン酸を含ませることでユーロピウムの周囲をクエン酸が囲うようになり、ユーロピウムは外からの影響を受けにくいまま強く発光する。「研究室での実験ではクエン酸のないタイプより約10倍強い光を出せることを確認した」(片岡博士学生)。がん細胞の表面には葉酸分子の受容体が多く出ているため、葉酸を混ぜて付きやすくした。

 これまでのバイオイメージング素材は量子ドット蛍光体を使うことが多かった。水銀やカドミウムを含むため毒性があり、体に優しい素材の開発が求められていた。

 片岡博士学生らは、骨の中でアパタイトとコラーゲンが結合していることから着想。コラーゲンと末端の官能基が似ているクエン酸を合成させたところ、強く光を出すことを発見した。

 現在、企業と実用化に向けて研究中。病気の早期診断・検査ができる製品として発売に道筋を付ける考えだ。

         
日刊工業新聞2019年5月27日

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