#5 町工場がデジタル広告で元請けを探すなら【Facebook広告応用編】

プロが教える 個人経営や中小企業のための 月5000円でできるデジタル広告【全5回】

 たとえば、あなたは金型を作る町工場をお父さんから引き継いで、新規顧客を増やそうとしている。そんな設定にしましょうか。主な取引先は玩具メーカー。プラスチックの人形を作るための金型を納品していると。  玩具メーカーに限らずですが、ビジネスマンにアプローチするならFacebookがいいでしょう。日本では仕事仲間が繋がる場所として使われることが多いからです。フツーのやり方としては、登録されたプロファイルを元に、玩具メーカーに席を置いている人たちに向けて広告を露出します。ターゲットの絞り込み方が異なるだけで、基本的なやり方はケーキ屋さんのとき(#2参照、リンクは下にあります)に紹介したものと変わりません。  しかしこの場合は、かなりの無駄が生じてしまいそうです。だって、玩具メーカーの中でも、製造責任者で金型を発注する工場を探している人なんて、1人か、よくて数人ですよね?その限られた人以外に広告を露出してもおそらく意味がありません。  では、どうするか。  まず、名刺を用意してください。所属している会社はどこでもいいのですが、自分の条件に合った金型工場を探している人と、これまで交流がゼロってことはないはずです。ご自分のお付き合いの中から「金型工場を探している人」の名刺を探して、その方のメールアドレスを取得してください。これを利用します。  そして、次の手順に進む前に、その方の情報を広告に利用することの許諾をもらってください。もしこっそり利用したとしても、その方に何か迷惑がかかることは何もないでしょう。だからといってこっそり使っていいかというと、法的にはグレーゾーンです。しかし個人情報の使い方が世界的に問題視されていますし、倫理的にもそこはお願いして確認をとっておかれるべきと思います。  迷惑はかけないことを説明してその方の許諾を取りました、としまして。Instagramと同様のやり方で(#2参照、リンクは下にあります)Facebook広告を利用します。ただ今回は利用の仕方がちょっと異なります。「カスタムオーディエンス」というものを作成してください。オーディエンスというのは、「広告を見る人たち」という意味ですが、ケーキ屋さんの場合はエリアや年代、興味関心などFacebookとInstagramで分類したものでした。「カスタム」は、そのどれにもあてはまらない、こちらで用意するもの、ぐらいの意味と思ってください。  カスタムオーディエンスを作成するときは、「LTVを含まないファイルを使用」を選んでください。なぜこれかというとかなりヤヤコシイ説明が必要となりますのでここでは省きます。そして、用意したメールアドレスを貼り付けるのです。そうすると、「リスト」というものができます。元データ的な意味ですね。そのリストを選択した上で、「類似オーディエンス」の作成に移ります。「類似」というのは、この人のWEB上の行動が類似しているという意味です。つまり、金型工場を探す人は、いろんな金型工場のWEBサイトを訪れているはずです(ただここについてFacebookは開示しておらず、Facebook上での行動に限られたものかもしれません。それにしても仕事関係の交流は「類似」しているはずです)。  元データとして利用させてもらった方と似たことをやっている人は、金型工場を探している人と推測できます(もちろん100%ではないにせよ)。そういった人たちに対して広告を露出させられるということです。ここで地域と「類似幅」を選びます。1~10%の中から選ぶのですが、1%は元となる人にかなり近い行動をしている人ですが、数は絞られます。10%になるほどその逆になっていき、数も増えます。  そして、配信対象の人数が出ます。CTR(露出した広告の中でどれだけクリックされるかの率)については自分で予測するしかないのですが、Facebookは0.05~0.1%と高めに出る傾向があります。ちょっと計算してみたところ、だいたい5000円の予算とすると、全国で10000~30000人くらいに見られることが期待できるはずです。ケーキ屋さんや士業と違って、元請けは近所である必要はないでしょう。地域を絞り込むほど配信できる対象が減り、一人あたりの単価が上がりますので、なるべく広めに設定するのが良いと思います。ただ、以上のことはあくまで理論値であって、金型工場を探している人が果たして日本に10000人以上もいるかどうかは僕には見当がつきません。上限値のようなものはあるかもしれませんし、計算通りにズバリうまくいくかは業種であったり、元となるデータ(今回使ったのはメールアドレス)の信頼性などでブレる、ということは認識しておいてください。あくまでこんなやり方があるんだという参考にしてもらえるとありがたいです。  5回シリーズで連載してきましたが、いかがでしたでしょうか。もっと細かい操作の仕方まで突っ込んで説明すべきかとも思いましたが、それは詳しく説明しているサイトをすぐに見つけることができるでしょうし、習うより慣れろで、やってみて損したとしても5000円ですから。つまずきながらまずは試してみる、ぐらいの気持ちで始めてみるのがよいのではと思います。  最後に僕から一つ注意事項を。  それは、「権利」について敏感になってほしいということです。デジタル広告は、ターゲットの個人情報を利用させてもらうやり方です。SNSを代表とする「プラットフォーム」と呼ばれるWEBサイトは無料で利用するための、いわば対価として利用者のデータを取得し、広告のターゲティングなどに使います。個人データは現代の石油などとも呼ばれ、各企業が取得に必死です。あなたもデジタル広告の発信者として一歩を踏み出せば、たとえばフォロワーの情報などを取得することになるでしょう。しかしそのデータを勝手に使って良いわけではありません。たとえば、あるお客さんが来店したとして、そのことをリアルタイムで発信したら、その留守を狙って空き巣が入ることもあり得るわけです。むしろ、自分が知っている顧客の情報を「守る」という意識でいてください。  また、WEBに落ちている画像や映像、音楽なども「権利を放棄する」などと明確にされていない以上は権利者がいらっしゃいます。広告表現に勝手に使っていいものではありません。権利者から訴えられることもあり得ます。  最近問題になっているのが、タレントなどの著名人の写真を勝手に自社広告に使うものです。タレントを起用する場合は契約しないといけません。わかってやっている悪質業者がほとんどと思いますが、もしかすると無知でやっている会社もあるかもしれません。広告表現に何かアートや誰かが撮った写真を使いたい場合、人物を載せたい場合、何にせよいちいち許諾を得なければいけないのだ、ということを強く認識しておいてください。  お店、事務所、工場、と見てきましたが、もちろんあらゆる業種で誰でもデジタル広告は活用できます。僕がずっと気になっているのは地方産業です。ふるさと納税で息を吹き返した地方産業は多いでしょうが、自治体頼みの体質のままでは制度が変わるたびに振り回されることになります。体力があるうちに自前で顧客を獲得するトライをしていくべきではないかと。そのために必要となるのがデータです。自治体、ふるさと納税サイトには莫大なデータが眠っているはずで、これをどのように「守りながら活用するか」が大事です。データを持っている側がそのような意識を持つことでデジタル広告はさらにいろんな産業の救いとなれる可能性を感じます。  では、5回もお付き合いくださいましてありがとうございました。  皆さまの事業が発展されることを願っております。  あと、僕は本業がクリエイティブディレクターでして、WEBメディア運用の細かいところまでは自分でやりません。この記事を書くにあたり業務提携先であるハートラスの宮田さんにいろいろサポートしてもらいました。感謝です。 連載一覧 #1 5月20日(月)、朝6時公開 #2 5月21日(火)、朝6時公開 #3 5月22日(水)、朝6時公開 #4 5月23日(木)、朝6時公開 #5 5月24日(金)、朝6時公開 プロフィール こしも・かずや クリエイティブディレクター、コピーライター。86年、東京大学法学部卒業、同年コピーライターとして博報堂入社。98年退社。現在、などがある。 担当編集・平川透、グラフィック制作・影山明日香

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