新産業創出へJST事業に選ばれた“香り”プロジェクトの中身

ステージ突破第1号に

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 科学技術振興機構(JST)が手がける文部科学省の「未来社会創造事業」で、研究テーマ絞り込みの“ステージゲート”突破の第1号が決まった。香りの新産業創出に向けて嗅覚メカニズムや脳・心理データを統合するプロジェクトだ。産業界の有識者の審査が厳しく、通過は3件中1件に留まった。評価対象として約40件が控える中、実用化率の高い開発手法の確立となるか注目される。  第1号は香りの分子に対する嗅覚受容体の機能解明、生体信号と脳活動の解析、香りの印象や質の可視化から、新たな食・生活空間サービスを創出する案件だ。東京大学の東原(とうはら)和成教授が研究代表者で、産業化で味の素や花王の参画を見込んでいる。JSTの基礎研究事業「ERATO」が土台となった。  2017年度開始の同事業は、分断されがちだった基礎と産学連携の研究開発をつなげ、試作まで後押しするものだ。主力の探索加速型は、小規模・多数の取り組みの「探索研究」で1―3年だ。次に予算・期間を充実させた「本格研究」へステージを移行する段階(ステージゲート)で大幅に案件を絞る。課題の再編成や集中投資、企業資金導入などを組み合わせ、実用化率の向上を狙う。  大手企業役員クラスを、各領域の統括やステージゲートでの審査メンバーに配置するのも特色だ。今回は持続可能社会、超スマート社会、安全・安心社会の3領域からの有力候補3件が審査された。  しかし研究成果ではなく概念実証(POC)の達成見込みを問われるなど、通常の事業と異なるハードルの高さから通過は1件にとどまった。今後、初年度採択組など多くの案件が、ステージゲートにさしかかる。 Q 事業の担い手として文部科学省とJSTの名が挙がるが。 A 文科省からJSTへの「委託事業」という形式だ。事業全体の企画と予算獲得は、文科省の役割だ。これを受けて公募や審査、運営管理や評価は、文科省が所管するJSTが、自らの事業として行う。 Q 基礎研究を発展させる通常の「フォアキャスト」型と、視点が逆だと聞いた。 A 従来型は、技術の実用化率としてはあまり高くない問題があった。対して同事業では先に未来社会を描き、それに向けた社会・産業ニーズに基づき、経済・社会的にインパクトのある目標を設定して研究に取り組む「バックキャスト」型だ。 Q 同事業の探索加速型の進め方は。 A 設定の4領域で、企業などからの公募で「重点公募テーマ」を決め、それに沿った産・学・官の研究開発課題をさらに公募している。探索研究はスモールスタートで研究開発費は1課題当たり年2000万円を最大3年間。次の、年2億―4億円を最大5年間の本格研究に進めるか、廃止か、宿題を出して様子見か、厳しく判定される。

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