ニュースイッチ

“ケチケチ経営”の旗は降ろさず…。検査不正で揺れるスズキ、経営責任どう決断?

鈴木会長は続投を示唆
“ケチケチ経営”の旗は降ろさず…。検査不正で揺れるスズキ、経営責任どう決断?

質問に答える鈴木会長(右)ら

 「法律に違反してまで利益を出そうとすることは、泥棒と同じ」。完成車検査のデータ書き換えなどの自社の一連の不正問題について、鈴木修スズキ会長は都内で開いた決算会見で厳しい言葉で言及した。鈴木会長が追求してきた低コスト、高効率な生産方式のほころびを改めて露呈した今回の不正。一方で鈴木会長は「“ケチケチ経営”の旗を降ろす考えはない」とも明言する。ブランドが毀損(きそん)した中でどのように再起を図るのか。土台からの改革が求められる。

 今回の不正のいきさつは、16年に発覚した燃費不正にまでさかのぼる。発覚後スズキでは「全社的に総ざらいをして」(鈴木会長)再発防止を図った。そのため、鈴木会長自身も「大丈夫だなと思い、生産部門からの報告をうのみにしていた」という。しかし現場では、国内の4輪車工場で課長級の人物が連絡を取り合い隠蔽(いんぺい)を図るなど、不正体質は末端で払拭できていなかった。

 体質改善の方策として同社から多く発言された言葉が「チームスズキ」。鈴木修会長の長男の鈴木俊宏社長が15年の就任後に、それまでの修氏による長年のトップダウン体制を改めて、部門間の連携を深めようと社内外に発信し始めた言葉だ。

 鈴木会長は今回の会見で、「研究設備や検査設備の予算(申請)をはねつけたことは一度もない」と、不正と自らの因果関係は否定した。だが、不正体質を改善できていなかったことが明らかになった手前、社内の風通しを良くするための施策の実行は避けられない。チームスズキの浸透に向け、現場との対話をもとに決断する体制へと、もう一段踏み込んだ体質改革が求められる。

 また、今回の不正問題の発覚を受け経営陣はどう責任を取るのか。鈴木社長は「減俸は議論の最中。処分は6月の株主総会までに話す」と語るにとどめている。鈴木会長には16年の不正でCEO(最高経営責任者)職を辞した過去があるが、「“投げ出しておしまい”ということは許されない」(鈴木会長)と続投を示唆する。体質改善に向け、経営責任についてどのような決断が下されるか注目される。
(文・竹中初音)
日刊工業新聞2019年5月14日(自動車・輸送機)

編集部のおすすめ