冷え込む市場…仮想通貨に問われる存在意義

相次ぐ不正流出に冷え込む市場

 仮想通貨を取り巻く環境が厳しさを増している。2018年に国内で不正流出事件が相次ぎ発生。政府や業界団体は利用者保護などに取り組んでいるものの、市場の冷え込みを理由に仮想通貨関連事業への参入を延期する企業も出た。従来、仮想通貨を単なる投機対象とみなす人が多いと考えられてきた。投機以外の存在意義の追求や国際的な規制の枠組みの整備がどれだけ進むかで仮想通貨の未来が変わる。  「『暗号資産』と言われて(その中身を)分かるような人が購入すべきだ、とする意図なのでは。あまり知らない人が手を出しにくくする効果はあるかもしれない」。三菱UFJリサーチ&コンサルティングの廉了(かどさとる)主席研究員は、日本政府が仮想通貨を暗号資産に改称すると閣議決定した背景をこう分析する。  仮想通貨は主要20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議では暗号資産と表現されており、改称で国際標準に合う形となる。ただ廉氏が指摘する通り、日本政府の狙いは、一般生活者が仮想通貨を円やドルといった法定通貨と混同して軽い気持ちで買ってしまうことを防ぐことにもありそうだ。  仮想通貨をめぐっては、もっぱら投機対象になっているとの指摘がされてきた。代表的な仮想通貨である「ビットコイン」の価格は、17年12月に200万円を突破。1年で20倍以上も値上がりした。  だが18年に入って風向きが変わる。1月、仮想通貨取引所のコインチェック(東京都渋谷区)は、仮想通貨「NEM(ネム)」約580億円分を外部からの不正アクセスで流出。仮想通貨への投機熱も下火になり、12月にはビットコイン価格が40万円を割った。  仮想通貨交換業者は手をこまねいているわけではない。業界団体の日本仮想通貨交換業協会は、利用者保護の枠組みの整備などを推進。金融庁は10月に同協会を資金決済法に基づく自主規制団体に認定した。認定されたことで、同協会は会員企業への処分も行える。  とはいえ、今後、仮想通貨への関心が高まるかは不透明だ。同協会によると、交換業者18社の利用者預託金残高は18年12月末時点で2786億円だった。「(ビットコインなどの)価格が下がったせいもあるが、かなり少ない印象」(三菱UFJリサーチの廉氏)。  19年4月にはマネーフォワードが、子会社を通じた仮想通貨関連事業への参入を延期すると発表した。理由として仮想通貨市場の冷え込みや、利用者保護に必要なコストの上昇を挙げた。  廉氏は、「仮想通貨業者は今後2―3年以内に再編が起こる。10社も残らないだろう」とみている。  仮想通貨に投機以外の存在意義を見いだすことはできるのか。京都大学公共政策大学院の岩下直行教授は、「円やドルが紙切れになっても、ビットコインが価値を保ち続ければ、お金として使おう、となる」と話す。  「ベネズエラは天文学的なインフレ率で自国貨幣がほぼ無価値となり、代わりに仮想通貨で決済がされている」という。今後、先進国でもそうした事態が起こりかねないと考える人にとっては、仮想通貨が魅力的に映るかもしれない。  日本では家電量販大手ビックカメラがビットコインでの支払いを受け付けるなど、仮想通貨は一部で決済手段として使われている。ただ一般には「支払い手段として受け入れられてはいない。(日本政府が推進する)キャッシュレスになったからと言って、現金の代わりに使われるということではない」(岩下教授)。  活用のすそ野が広がるか否かにかかわらず、規制やルールを点検・改定し続けることは必須だ。マネーロンダリング(資金洗浄)をはじめとする課題は国際的な協調のもとでの対処が求められる。  6月には福岡市でG20財務相・中央銀行総裁会議が開かれ、仮想通貨関連の規制について議論される見通しだ。岩下教授は「(流出事件やその後の対応といった)日本の経験を生かしてほしい」と期待をかける。実効性の高い規制を世界レベルで構築できれば、将来、仮想通貨が普及する可能性は高まる。  仮想通貨に携わる企業は、これまで以上に戦略や内部統制が問われる。日本仮想通貨交換業協会の会長も務めるマネーパートナーズグループの奥山泰全社長に、同社としての市場動向の認識や今後の展望などを聞いた。 ―仮想通貨に厳しい目が向けられているのではないでしょうか。 「17年末までのビットコイン価格の上昇は明らかにバブルだった。仮想通貨への十分な理解がないまま、市場が先行したことは残念だった。一方で18年、自主規制団体立ち上げの機運は急速に高まり、セキュリティー強化や投資家保護の枠組みなどが整備された。少し言葉がおかしいかも知れないが、業界にとっては良かったと思う」 ―投機以外に仮想通貨の存在価値を見いだすことはできますか。 「(仮想通貨の基盤技術とされる)ブロックチェーン(分散型台帳)、つまり公衆データベース(DB)網にデータを安全に置いておき、より平易に移転できる時代になる。例えば、不動産や戸籍などの情報は行政が多大なコストをかけて維持するよりも、公衆DB網にのっていて良いものだと思う。公衆DB網の管理者に支払う対価として仮想通貨は必要だが、実用例が世の中で多く出てこないことには理解されにくい」 ―仮想通貨交換業を手がける子会社を設立し、20年4月以降にサービス開始予定です。 「(既存の仮想通貨取引所である)ビットフライヤーさんなどに類することを、きちんとやる。先達を尊敬しつつ、競合として新規参入する。仮想通貨交換所業界を安心・安全な、一般の方から信頼されるものにしたい」 (文=斎藤弘和)

続きを読む

関連する記事はこちら

特集