“やらまいか”精神で浜松のベンチャー魂に火を付けろ!

ピッチに熱心に耳を傾ける参加者ら(中央は鈴木市長)

 浜松市を中心とする遠州地域でベンチャー機運が盛り上がってきた。かつてトヨタ自動車グループの始祖である豊田佐吉やホンダの本田宗一郎、ヤマハの山葉寅楠ら、偉大な起業家を生みだしてきた土地柄。近年は「起業数が全国平均以下」(鈴木康友浜松市長)と停滞気味だが、基幹産業である自動車業界の環境変化や人口減への危機感から、地元の若手ベンチャー族(ベンチャートライブ)が立ち上がった。  「昔は“やらまいか”だったが、今のままでは“やめまいか”になる」と、鈴木市長が檄(げき)を飛ばす。やらまいかは「やろうじゃないか」という意味の方言で、遠州人の進取の精神や行動力を表す。同地域に本社を置くスズキやヤマハもはじめはベンチャーだった。しかし大企業に成長し、地域がモノづくりの一大集積地となったことで「口を開けていれば、下請け仕事が入ってくる」(自動車部品メーカー)。恵まれた環境が続き、いつしか反骨精神やベンチャースピリットが薄れていた。  そんな中、2017年に発足した「浜松ベンチャートライブ」は自治体でも金融機関主導でもなく、地元ベンチャー企業の経営者らが立ち上げたベンチャーコミュニティーだ。中心メンバーはパイフォトニクスの池田貴裕社長、リンクウィズの吹野豪社長、NOKIOO(ノキオ)の小川健三社長、こころの渡辺一博社長、SPLYZA(スプライザ)の土井寛之社長の5人。業種はロボット用ソフトウエアや光技術、IT関連などさまざまだ。  これまでに5回開催したイベントでは、地域の起業家のほかベンチャーキャピタル(VC)や金融機関、行政、大企業の新規事業担当者らが参加。トライブメンバーや他の起業家が短時間で自社の紹介や経営への思いを語る「ピッチ」では、会場から矢継ぎ早に質疑が飛んだ。  「技術が難しすぎる。素人にもわかりやすいようシンプルに」と鈴木市長も積極的に参加し、顧客目線のアドバイスを送る。参加者の一人は「気軽に活発な意見交換ができる場所。熱意を感じる会でイベント参加後にやる気がみなぎる」と、熱っぽく語る。  主要メンバーのパイフォトニクスは、光産業創成大学院大学発ベンチャー。光技術を応用した産業車両向けの注意喚起照明「ホロライト・ミニ」シリーズは、自動車や鉄鋼業界から引き合いが相次いでいる。またリンクウィズは産業用ロボットが自動で物体認識し、動きを補正するソフトが主力。変化への対応など、ロボットの「チョット使いにくい」を解決する技術に、大手自動車関連メーカーも注目している。吹野社長は「町工場でも簡単に使える統合型ロボットシステムを開発したい」と夢を語る。  事業を軌道に乗せ、脱ベンチャーが見えてきた中心メンバーが後進を導き、新たなベンチャーが次々と生まれる仕組みと雰囲気作りを目指す。最近は東京や県外からの参加者も増えているという。「地域の垣根を越え、協業できる形態にもっていきたい」と池田パイフォトニクス社長。“やらまいか精神”を復権させようとひと肌脱いだベンチャー族の活動が、大きなうねりになろうとしている。 (文=田中弥生)

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