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【日立建機】建機生産の自動化、先進する工場の中身

連載・企業研究/日立建機(2)
【日立建機】建機生産の自動化、先進する工場の中身

産業用ロボットを活用して生産を省人化する

 「販売側の要求に対して生産が追いつかない」―。ミニショベルを生産する日立建機ティエラ(滋賀県甲賀市、0748・62・6431)社長の中村和則は、渋い表情を浮かべる。親会社の日立建機が打ち出した生産再編の対象で、増産に追われながら工場改革を続けている。

 建設機械の生産に自動化が徐々に波及する中で、日立建機ティエラのモノづくりはさらに先行している。走行装置の組み付けにはロボットを使う。作業者顔負けの器用さで、部品の選別から取り付けまでを自動化した。「人手による作業に比べて、締め方が緩んでしまうのを防ぐ」(中村)という。自動車のようにロボットを駆使した生産とまではいかないものの、建機生産の省人化につなげた成功例だ。

 また同社ではタブレット端末約90台を活用した作業支援システムも運用している。作業要領や確認事項などを分かりやすいように電子化した。作業者にはブラジル人が多く含まれており、ポルトガル語でも表示する。

合理化を徹底


 こうした背景には合理化を徹底する方針がある。4年前からミニショベルの生産改善に着手し、作業工程数を2013年度と比べて、約3割減らすことを目指している。組み立てや製缶などを抜本的に見直しており、日立建機グループの中でもモノづくりを追求する姿勢は際立つ。日立建機社長の平野耕太郎も同社の活動に一目を置いている。

 ミニショベルの製造ラインとは別に、現場では日立建機の茨城県内の工場で手がけてきた小型ホイールローダーの生産を受け入れる準備も着々と進む。これにより同社の兵庫県内の工場と日立建機ティエラの本社工場を生かした小型建機の一貫生産体制を築く。好調な需要に対応しながら、生産に“メス”を入れるハードルは高い。工場の空いたスペースを活用しながら、効率的な生産ラインを整備する。

海外と関係強化


 一方で、海外のサプライヤーとの関係強化にも動いている。ロシアの産業振興を支援する経済産業省の施策の一環で、3月上旬に茨城県内の工場でロシアの板金加工業者の視察を受け入れた。日立建機のロシア法人と取引している業者で、ノウハウの吸収や供給拡大に向けて鉱山機械の生産を見学した。

 “日立流”のモノづくりを示すことで、サプライチェーンの底上げを期待できる。過去最大の構造改革は生産にとどまらず、約50年にわたって築いてきた建機販売が中心の事業モデルの刷新にも及んでいる。(敬称略)

連載・企業研究/日立建機


【01】売上高は1兆円の大台に…でも「規模は追わない」日立建機の真意(2019年4月29日配信)
【02】建機生産の自動化、先進する工場の中身(2019年4月30日配信)
【03】収益拡大の要は巨大情報インフラだ(2019年5月1日配信)
【04】拡大する部品再生事業が大事なこれだけの理由(2019年5月2日配信)
【05】鉱山機械のパラダイムシフト、突破のカギは“日立力”(2019年5月3日配信)
【06】社長が考える自動化技術の可能性(2019年5月4日配信)
日刊工業新聞2019年4月18日

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