日本企業の現状は“広く浅く”、SDGs本格化へ大事なこと

慶大大学院・蟹江教授に聞く

慶大SFC研究所と企業、自治体が立ち上げた「xSDGコンソーシアム」。月1―4回は分科会などを開いて議論する

 持続可能な開発目標(SDGs)は目標17で企業や行政、市民社会のパートナーシップを求めている。実際にSDGsが接点となって新たなパートナーと出会い、ビジネスやイノベーションのチャンスが広がる事例が生まれている。SDGs研究の第一人者である慶応義塾大学大学院の蟹江憲史教授にパートナーシップの効果や日本のSDGsの方向性を聞いた。  ―蟹江教授が所属する慶大SFC研究所(神奈川県藤沢市)は2018年6月、企業14社、自治体3団体と連携する「xSDGコンソーシアム」を立ち上げました。狙いは。  「SDGsは進め方に決まった“型”はなく、自分なりの活動でも世界とつながる。このような活動は過去になく、企業はどう取り組んでいいのか戸惑っていた。そこで産学官の共同研究で優良事例を示すことが大事と感じた。また“やっているふり”が目につき、(うわべだけ取り繕った)“SDGsウォッシュ”の批判も出てきた。しっかりとした取り組みの基準も発信したいと思い、コンソーシアムを立ち上げた」  ―企業の参考となる優良事例の示し方は。  「SFC研究所の教授が連携する『xSDG・ラボ』と、企業や自治体との共同研究で優良事例を創出する。いま無印良品、静岡市とそれぞれ研究しており、得た知見をコンソーシアムメンバーと共有する。19年夏から成果が出てくるはずだ」  ―さまざまな機関がSDGs事例を公表しています。あえて創出する狙いは。  「今は、過去からの取り組みをSDGsとしている事例が多い。大事なのは、SDGs達成を目指した新たな活動をスタートすること。SDGsに取り組むには工夫がいる。優良事例の工夫がコンソーシアムで共有されると普及もする」  ―パートナーシップの効果は。  「不足部分(技術、知見など)を他者に補ってもらうことで、新しい手法や発想が出てくる。お金を払っても補完ができるが、パートナーとならコストをかけずに補える。案外、自分たちの領域は自分たちでやろうとしがちであり、SDGsは連携のきっかけを与える。地方創生でも官民連携が活性化すると、自立分散的にパートナーが結びつき、持続可能になる」  ―日本のSDGsの評価は。  「産業界にSDGsが広がり、好スタートを切った。一方、欧州は広がりは欠くが、1社1社が本質的であり“深み”がある。例えば持続可能性につながる商品や生産にシフトしている。深掘りする企業が増えると、ビジネスで欧州に先行される」  ―確かにSDGsを取引条件にするなど、事実上の商業ルールにする動きがあります。日本の対策は。  「日本は“広く浅く”だが、深掘りしたい企業が出てきた。本気でSDGsに取り組むと費用がかかる。そのコストを将来への投資として考えられるか、どうかだ。私は公共政策の力で変えられると思う。SDGsに貢献する商品には補助金を出すなどし、企業が経済メリットを感じられるようにするとSDGsが本格化する」  SDGsはパートナーシップを生み出し、ビジネス機会を広げている。LIXILは18年7月、国連児童基金(ユニセフ)と協力関係を結んだ。ユニセフは、屋外排せつで汚れた水が原因となる児童の死亡をなくそうと途上国にトイレを啓発するが、商品は製造していない。一方、LIXILはトイレを供給できるが、1社で途上国にトイレを普及させるには限界があった。両者の立場は異なるが、SDGsの目標6(水の衛生)を共有できた。LIXILは途上国にトイレ市場を創出するチャンスだ。  富士ゼロックスは長崎県壱岐市と協力関係にある。同社はテレワーク拠点の整備を支援し、地域経済の活性化に貢献することでSDGsを推進する。壱岐市はSDGsを活用した地域づくりを実践できる。内閣府の「地方創生SDGs官民連携プラットフォーム」にも連携したい企業と自治体が合計600団体以上参加している。 (文=編集委員・松木喬)

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